第24話 痛い

次に気がついたときには、左手は独りぼっちだった。


瑠依の右手などどこにも無かった。


それと、見慣れない天井と薬の臭い。


一瞬でここがどこか分かってしまった。


「痛い。」


背中が痛む。


あと…心が。


なにか寂しい気持ち。


これは何だろう。何かが欠けている。


そうだ…


「瑠依は!?」


勢いよく起き上がった。


ズキッ


「駄目ですよ。まだ痛いところだらけなんだから。ゆっくり起きないと。」


知らない看護婦が私の背中を支えながらベッドへ寝かせた。


そんな優しさなど無視して彼女の手を振り払って、


「瑠依はどこ?どこにいるの?どこへやったの?」


不安で、不安で、涙が次々と溢れ出す。


きっと私は、心の中では気づいていた。


「彼は…、瑠依くんは亡くなられました。」


「嫌っ…、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ」


その言葉を聞いた瞬間、自分でも知らない声で叫んで、叫んで、泣き叫んで、手に届くもの全てを投げ散らかした。


外から何人もの看護師と医者が来て、掴まれ、またベッドの上へ寝かせられた。


また、知らない痛みが心を引き裂こうとしている。

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