マシュマロさんは魔法使い!
五十貝ボタン
勇生のばあい
はじまり
こんなふうに考えたことって、ある?
もしなんでもない朝に、空からだれかが落ちてきたら、どうしよう、って。
こんなふうに考えたことは?
その日の夜に、自分が空から落ちることになったらどうしようって。
ぼくは――
「落ちるー……っ!」
まるで、ニュートンがみていたりんごになったみたいだ。
手足をばたばたうごかしたって、つかまるものがあるわけじゃない。
風がびゅうびゅうと耳元で音をたてている。すそをまくったパジャマがばたばたとからみついてくる。
おとうさん、おかあさん、いままでありがとう。
それから、ちょっとだけ、お兄ちゃんも。
住みなれた街を、考えたことがないくらいの高さからみおろして、これがぼくが最後にみる景色になるんだって、そう思った。
その景色が、どんどん近づいてきて……
「勇生くん!」
声。
ぼくは首をあげて声のしたほうをみる。おりたたんだ
そう、飛んでいた。
ふたつ結びにしたながい髪をはためかせ、その子はまちがいなく、そのカサで飛んでいた。
「手をのばして!」
落下していくぼくのほうへ、女の子が手をのばす。ぼくは、夢中で彼女のほうへ手をのばす。
手がふれるまで、あと10センチ。
指と指のあいだを風がすりぬけていくのを感じながら、ぼくはおもいだそうとしていた。
どうしてこんな、不条理で、不自然で、不本意なことになってしまったのかを……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます