Endless Happiness④
「残念ながら私は今後悔している、お前を生かした事にな。帝国崩壊の日に殺しておくべきだったと」
「それは私もだカミラ、貴様は帝国騎士として葬っておくべきだった。あの頃の、誇り高き騎士のままでな」
黄金の鎧を纏ったカミラは天から降ってきた槍を掴み、燃えるような熱気を放つ槍を振るう。
それを合図に後ろの騎士が一斉に私に向かって得物を掲げ、全方向を取り囲む。
手負いの鈴鹿と捕虜を守る為に龍力で籠を作り、その中に全員を避難させる。
「騎士の姿をしているのだろうが、貴様が連れてきた悪魔なのだろう」
「馬鹿だな、貴様を相手にする者たちは既に居る。こいつらはその後ろのゴミ掃除だ」
振るわれた槍から照射された光から逃れる為に飛翔して外に出ると、建物の周りを大軍勢が包囲していた。
空を半分程埋め尽くす黒が動き始め、姿を現した私へ一斉に魔力を放つ。
降下して建物の中の悪魔を全て串刺しにしてから、カミラに飛び掛って建物の外に押し出しながら、群がる悪魔の間を飛び抜ける。
回避運動の為に地面スレスレを飛行していたが、地面に足を着けたカミラに容易く止められ、勢いを利用されて地面に叩き付けられる。
「何故本気を出さない、その姿で私を殺せると思ったのか。半人だとしても私は神だ、甘くはないぞ。あの娘に会えなくなるのがそんなに怖いか、その前に今ここで貴様の大切な人間の元に送ってやろう」
「トコハナ!」
咄嗟に飛び退いたカミラは来る筈の無い一撃の為に身構え、何も無い事を悟ると、鼻で笑って槍を地面に突き立てる。
「これはやられたな、あの魔殺しのトコハナを使うとは。以前の貴様とは違う、成長した所だな」
「やられっぱなしでは気に食わんからな」
背後から忍び寄っていた悪魔をパラシュが切り裂き、飛来した闇魔法をミョルニルが倍にして弾き返す。
飛び上がった私を追って大量の悪魔が列を成して追撃し、私が放つ雷によって次々に焼け落ちていく。
空に向かって高度を上げては速度を落として魔法を放ち、また速度を上げて逃げるを繰り返していたが、遂に数で圧倒的に勝っていた悪魔に全方位を塞がれる。
「カミラめ、私が一対一が得意だと言うことを知って束で来たってことじゃな」
「叩き込め!」
兵士長らしき悪魔がそう叫ぶと同時に、飛行中に溜め続けていた魔力を、中央の私に放つ。
「ヴァニタスライディーン」
私を中心として球状に広がる雷に飲まれる悪魔を見下ろしながら、全身に掛け巡らせた神力の調子を確かめる。
「貫けぇぇ!」
光速で飛来した熱照射を避けながら肉薄し、一瞬で詰めた距離を殴打で離し、両手に生成した雷弾を叩き込む。
カミラの目が光った後に雷弾は消え去り、その奥から光の糸が広範囲に返ってくる。
全身に降り注ぐ痛みを神力が急速に治していき、傷が出来る前よりも綺麗な状態に戻る。
容易く鱗を貫く思い一撃が逸れ、建物に向かっていくのが見える。
「きさっ……カミラ!」
建物からカミラに視線を戻したが、既にその姿は視界から出ていて、どこから来るか分からなくなった攻撃に備えようとしたが、咄嗟に体が建物の方に動いていた。
体が崩壊しそうな速度まで加速したが、光速に追い付くには遅過ぎた。
「ト……ドかナ、イ」
思考が焼き切れる直前にカミラの姿が建物の前に映り、眩い光を放った後に意識が途切れる。
気付けば旧帝国の王城の屋根に寝転がっていて、日に焼かれないように翼で影を作り、そろそろ飛んで来るであろう声を待つ。
「トール、ここよトール」
声が飛んでくる小さな窓を屋根の上から身を乗り出して覗き込むと、従者に見付からないように静かな声で、美しいドレスを纏った女性が手を伸ばす。
その手を掴んで引き上げ、屋根に引っ張り上げる途中で止め、少しの間だけ宙に浮かせる。
「ちょっと、何をなさるのですか。早く引き上げて下さいトール」
「はははっ、そんなに空が怖いか」
「空は怖くありませんが、この様な状況は怖いです」
「なに、悪戯だ。すぐに引き上げてやるよ」
絶対に落ちまいと強く握られた手を握り返し、すっと引き上げ、胸の中に飛び込んで来る所を受け止める。
「もう、いけずですよ」
「そう膨れるなジュン」
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