龍人種の王⑦

人類に協力している神を探す為にイシュタルと別行動になり、王都に到着した人類と龍人が争う城の前に到着する。

1番激しい戦いが繰り広げられている城門の前には、龍人王自らがドラゴンになって刃を交えている。


魔導騎士で編成されているであろう魔導部隊の魔法を受けながらも、圧倒的な龍力で一小隊を瞬く間に消し去る。

龍人王に加勢するのも気に食わないが、嫌いな事もやらなければいけないのが生きる為であり、これからの未来を切り拓く大きな力となる。


人の姿からバハムート型に姿を変えて、同じ姿の龍人王の隣に並ぶ。

人類側から見ると普通のドラゴンでも脅威だが、特に龍力の高いバハムート型は魔の王とまで比喩される。


「手を貸そうか龍人王」


「ここは手が足りておるのが見て分からぬか、貴様は王都に入った人共を潰せ」


「いけ好かぬ奴じゃな、頼まれてやった。おぬしの民草は必ず助けよう」


「大きな口を叩いてくれるな、私に受けた恩を死んで返せ」


着地した途端に足下に群がり始めた人間を全て蹴飛ばして、サイズに合う大きさにしたミョルニルで地面を割る。

隆起した地面と沈下した地面の間に流れ落ちていく人間に、龍力を炎に変えて隙間に流し込む。


「群がるでないゴミ虫共が、次からはその命刈り取るぞ」


「殺せトール!」


城門の周りの人類を全て消し飛ばしたエルデグラートが出来た溝に、殺意で満ち溢れた龍力をマグマに変え、溢れる程流し込む。

そして再び城門の前に飛翔したエルデグラートが、少数ですり抜けようとする騎馬隊に向けて火球をぶつける。


それから大きな咆哮を後方の十二万に向けると、騎馬隊が乗っていた馬が一斉に倒れる。

これ以上エルデグラートの逆鱗に触れない様に王都に逃げると、途中で立派な王城が姿を現す。


王城の1番上の部屋から出て来たメルトが近付いて来ると、ドラゴンにならずに剣を携えて隣に並ぶ。

合わせる為に人型に戻すと、王都から激しい黒煙が吹き上がる。


「すまぬが急ぐぞメルト」


「私も王族として民を守ります」


「うむ、良う言うたメルト。おぬしの背中は私に任せよ」


「お任せします、先にミレニアさんとメアさんは出て行きました、恐らくどこかで戦っておられます」


「堅苦しいのは無しにせぬか? 1将の私にそんな言葉使いは威厳を保てなくなるぞ、王族として気高くな」


「私は王族なんて器じゃないですよ、妹の方が余程王族って感じですよ」


残念ながら決められた窮屈な縛りやしきたりには何も言えず、私には分からない所で色々な事があるのだろう。


「トール様が王様なら良かったのに……今からでもなりませんか、龍人種の王に」


「それはエルデグラートに対する宣戦布告かの? まさかあの小さかった少女がこの様な気持ちを抱いてしまうとは、その言葉はここだけのものにしておくと良い」


「そうですよね、すみません変な話をしてしまって」


「なに、気にする事は無い。メアたちとは離れた所に行こう、向こうに襲われている者を見つけた。急ぐぞメルト」


「……はい、いつか必ず」


小さな返事の後に何か言った様な気がしたが、風を切る音が声に聞こえだだけがもしれない。

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