里帰り②
「我、
そうして出てきたのは人型のミョルニルで、神格器としての自分を携えている。
「ミョルニル、武器としておぬしを呼んだのだぞ」
「知らんな、私だって少しくらい活躍の場が欲しい。おぬしが喰らった動物の蘇生道具だけなどうんざりだ馬鹿」
勢い良く振り返ったミョルニルは噛み付くような勢いで私の両腕を掴み、唸りながら荒くなった息を整える。
それを見てくすくす笑っている鈴鹿を見て、今度はそちらに標的を変えて掴みかかる。
「行こうかアリス、楽しそうなのを邪魔してもな」
「アイネは私が守るから、アイネは背中に隠れててね」
「では遠慮なく背中は任せよ」
翼を広げた拍子に鉤爪を撒き散らして、一斉に広範囲に渡って降り注がせる。
殺さないようにひとりひとり拘束して動きを封じ、投げて一箇所に投げる。
鞘を払わずに叩くアリスは、まだぎこちない動きをしているが、そこもカバーして伸び伸びと戦えるようにする。
「っざけんなー!」
ミョルニルの素の口調の叫びと同時に、投げられたハンマーが電気を帯びて地面ごと抉る。
弧を描いて手に戻ったミョルニルは、今度は姿を大きくして壁を作る。
ゆっくりと傾いて大地を割ったミョルニルが小さくなると、腕に神力で強化している刻印が刻まれている。
「おら来いやゴミ共が! 全員纏めてシバいてやろうか、あぁ?」
「ミョルニル口調が戻ってお……」
「るっせーぞ老いぼれドラゴン! てめーが持ち主か何か分かんねーけどよ、こっちはお前の食料の蘇生道具か? はぁ?」
遂に全力で反抗期に入ったかとこれ以上刺激しないように縮こまると、今度は少し離れた所から爆発音らしきものが響く。
土埃が舞い上がった場所を見ると、左側の額に三本角を生やした鈴鹿が、深紅に染まった左眼の下をひび割れさせている。
昔一時期務めていた城の書庫で読んだ事があるそれは、確かごくひと握りの鬼族しか使えない、無理矢理身体能力を限界以上に引き出す
非適合者がすると一秒も持たないこの状態を、鈴鹿は継続して刀を振るい続けている。
「徳川の世など認めぬ、豊臣こそ日の本を治めるのに相応しい。殿下の御恩を忘れた不忠者共に刻み込まねばな」
冷静さを欠く事が命取りとなるという事を分かっている二人がこうなったのは、恐らく他の干渉を受けている。
それを潰さねば二人は動くものに無差別攻撃を仕掛ける、そうして磨り減った先にあるのは人である事が難しくなる境地。
「ここは任せたアリス、二人の視界に入らぬ様にな」
「アイネどこ行くの?」
「綺麗な花でも摘んで来ようかと思うてな」
「分かった! ここは任せてね!」
アリスに手を振って嫌な気配がする方角に飛び、三つある山の中で一番高い山を目指す。
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