五大英雄の一角

空の上で集合していたメルトに追い付いて、ナーガの手の上から飛び込んで来たアリスを抱きとめる。


「アイネちゃんと帰って来てくれたね、いい子いい子!」


「はははは、きちんと皆を困らせずに待っていてくれたな。アリスも良い子だ」


「私はアイネを守れるくらい強くなるもん、だから泣いたりしないよ」


「強い子になって皆を守ってやれ、その時のおぬしはさぞ美しいのだろうな」


両手が塞がっている為手で撫でてやる事は出来ないが、代わりに尻尾の先で優しく頭を撫でる。

そうしてやると、先程まで不安な顔をしていたアリスが笑顔になる。


「進路偽装感謝しますトール様、ですがこれからは大将の貴方でなく……」


「四時方向から天馬騎士が来たぞメルト!」


そう叫んだ男の指差す方を見ると、槍を携えた騎士が天馬に乗ってこちらに向かって来ていた。


「まだ敵と決まった訳では無い、私が行こう」


「いえ、トール様は此処でお待ち下さい。このメルトが行きます」


前に出たメルトが左手に剣を隠して飛んで行き、五人で編成された天馬騎士と話している。

全員が感じているであろう緊張を自分も抱え、戦闘待機体勢でいつでもすぐに行けるよう気を張る。


話が終わって天馬騎士と一緒に来たメルトは、私に頷いて敵意無しの合図を送る。

それに頷きを返して背中に隠れていたミョルニルを、ナーガの手の上に移動させる。


「こちらの方はメリュー公国の天馬騎士副長の方で、帝国に戦意を確認をする為に行ってらっしゃったみたいです」


「お初にお目にかかります、メリュー公国天馬騎士団が副騎士長、ミレニア・ファンドと申します。トール様のお話はオーディン様から伺っておりました」


「ラクリア戦争の時か、私が参加したらオーディンが最強なんて言われていなかっただろうな、本当に残念だ。おぬしの噂は聞いておる」


「確かトール様はその時ヨルムンガンド様の毒の治療で動けなかったのですよね、そのお陰で私のお仕えするオーディン様が名を馳せられたので感謝しております。戦果ゼロさん」


「ほう、この私に喧嘩を売るとは。私を崇めなかった愚かな己を恨むのだな」


「オーディン様と同じ土俵に立っていると思わないで下さい、無名の貴方とオーディン様のどちらに人が集まると思っているのですか?」


「私には眷属が三人居る、一人ずつが一大国と同じ程の強さだ」


「三人ですか、オーディンは友だちで居て下さると思いますよ。寛大なお方なので」


馬鹿にした笑い方でくすくす笑うミレニアへの怒りを抑え、訳が分からずきょとんとしている顔のアリスを見る。

天馬を見たアリスの目が輝いたのを見て、指を差したアリスに頷く。


「行ってこいアリス」


「行ってくる!」


腕の中から飛び出したアリスは天馬に飛び掛り、ミレニアが暴れ出した天馬を落ち着かせる為に必死に対処する。

翼にしがみついたアリスと共に落ちた天馬目掛けて急降下する。


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