入口

 いよいよ今日からダンジョンに挑戦することになる。

 予定は、五日間。このダンジョンは、帰還ワープと、攻略階からの再スタートを可能にするワープ機能がある、いわゆる先人が残したダンジョンである。

 ただ、後に成長したダンジョン階層にはもちろん転移装置はないので、ワープ階層まで進まないとかなり前まで戻されてしまうのだ。それらワープがある階層や、キャンプをするのに最適な空白地帯の場所などもマップ化されていて、生徒たちはその地図を参考に攻略していくのである。

 ダンジョンの入口には、見張りと許可証の確認をする雇われ冒険者が数名交代で駐在していた。いざという時に、回復や戦闘をこなせるレベルの人材が常に詰めているのである。


「ワクワクするわね。リュシアン、地図お願いね」


 ニーナは、許可書を提示しながら、後方のリュシアンに声をかけた。

 マッパーは、基本的に後衛の仕事だ。人数が多いパーティでは、マッピング能力を持つ人材にマッパー兼荷物持ちをさせたりしているが、最低人数のリュシアンたちのパーティにはそんな余裕はない。


「大丈夫だよ、昨日一通り目を通してきたから」


 今回予定しているのは、始めのワープ陣がある三階層への到着である。このダンジョンの最下層は、二十五階。かつて倒したというダンジョンボスは、ツノドラゴンだったらしい。

 リュシアンの腰ベルトに装着されたバッグの革になっちゃったアイツである。小規模とはいえ、ダンジョンボスを張れるほどの種族だったようだ。


 三階層までに出没するモンスターは、主に虫系と、ネズミやウサギのような小型の動物型である。そして、三階層には稀に不定形型モンスターのスライムが出現する。

 不定形型の中でも最弱の種類で、ジェリーと呼ばれる雑魚だ。けれど厄介なことに通常攻撃があまり有効ではなく、パーティによっては初めの難関ともいえるモンスターだった。


「じゃあ、予定通りに。前衛は私とアリス。真ん中にエドガー。後衛はリュシアンと、ダリルで行くわよ」


 ニーナの掛け声で、ついにダンジョン攻略が開始した。

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