鍛冶職人2
仲間にするにあたって、ダリルにはいろいろと話を聞いた。
リュシアンだって、ただの乱暴者を仲間になどしない。一番の理由は、やはりモンスターを寄せない体質に興味を持ったから。これは獣人なら、誰でも多かれ少なかれは持っている能力だが、この力をコントロールできるようになると、逆に引き寄せたりもできるらしい。
さらには、魔法科の実力者だという事。魔法使いの弱点である体力のなさ、身体強化のスキルや無属性を持っていないという欠点を、ダリルはその獣人の血で克服している。豊富な魔力を持ち、複数の属性魔法を操れると同時に、人間離れした頑丈な身体を持っているのだ。
ダリルはこう見えて、苦学生だった。
出身は、モンフォールの魔境よりももっと奥の、山岳地帯。
貧しく小さな村が集まっただけの、雪の多い寂れた地域だった。人々は、細々と家畜を育て、痩せた土地を耕して暮らしていた。そして、その地域の住民の多くはまったく魔力を持っていなかった。
なぜなら、ほぼ全員が獣人の血を引いていたからだ。もとより差別され、つまはじきにされこんな奥地へと追いやられたのである。
ただし、ごく稀に強い魔力を持つ子供が生まれる。
魔力を持つ亜人の血が強く出ることがあるのだと言われているが、詳しくはわからないという。そしてダリルは幼いころから魔力があったため、この村へ立ち寄った商人に預けられ、こうして学園都市へときたのだ。
ギルドへの登録が出来る十三才ですぐに冒険者となり、今は小さな依頼をこなしつつ、ほぼ自力で生活しているという。学校の費用は、肩代わりしてもらっているのでコツコツと返していると聞いた。
と、いう話だったのだが……
「飛び出したんじゃねぇよっ、寮に入るっつったじゃねぇか!それより、ジジィ!なんでいつまでもこんなおんぼろ小屋にいるんだよ。とっくに新しいところは出来てんだろうが。だいたい、弟子はともかく手伝いくらい雇えって、パトリックさんも…」
ずんぐりむっくりの老人は、身体に似合わぬ大きなげんこつを有無を言わさず、いきなりダリルの頭に叩き落とした。
「痛ってぇっ、何しやがんだこのクソジジィ!」
なにが始まったの?えっ、親って、この人がダリルの父親?いやいや、獣人の血は混じってはいるけど、人間のはずだよね??この職人さん、どう見てもドワーフなんだけど……
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