使い道2
先ほど話題にでたフリーバッグの裏地。主に砂漠蟻のレア種、女王蟻の羽根が使われるのが一般的だが、キラーアントの羽根を使うことで、さらに上位の収納力を持つものが出来る。
ただ、キラーアントの「羽根つき」と呼ばれるオスは、巣穴の奥にいることが多く、生息域と言われているダンジョンの深層部にさえ滅多に現れることがない。
出会うことも奇跡だが、なによりその頑丈な身体と逃げ足の速さ、おまけに反撃時の攻撃力が凄まじいらしく、倒すことが困難な難敵なのだ。
これを拾ったアリスの談では、本体はぺちゃんこで回収できなかったという。
うん…、チョビだね。
おそらく逃げる間も、反撃する間もなく、そして頑丈な身体も空しく一瞬でプレスされてしまったのだろう。恐るべし、重力攻撃。絶対に食らいたくない魔法の一つである。
「ちょうどよかったじゃない、それでフリーバッグ作りなさいよ」
シートに広げられる分を出し終えたニーナは、ポーチをテーブルに戻しつつリュシアンにそう提案した。
「いいの?貴重なアイテムだよ、これ」
「いいも悪いも好きに使えばいいのよ、リュシアンはね。それに、前にフリーバッグを自作したいって言っていってたじゃないの」
そうはいっても、これを練習用に使うわけにいかないよね。少なくとも、初めての縫製で作るような材料ではない。練習は練習として、これは誰か職人に頼んだ方がいいかもしれない。
そのまま使えそうな魔法道具はともかく、素材類や手直しが必要なものは、加工や縫製、彫金、鍛冶が必要になる。信用のおける職人探しも急務となるだろう。
一時間ほどかけていくつか鑑定してみたが、簡単な鑑定スキルの魔法陣では名前すら出てこない物がざっと半分くらいあった。
どちらにしても今日は、ニーナ達をいつまでもここに置いておくわけにもいかず、適当なところでお開きにしようということになった。改めてどこか落ち着ける場所を確保する必要があるだろう。そして、何をするにもお金はいるし、できれば換金できそうなものをちゃんと捌けるルートも然りである。
「ねぇ、パパに相談してみる?」
広げていた品物を、みんなで種類別に分けながら片付けていると、ふとアリスが思いついたように顔を上げた。
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