使い道
物は考えようだ。今年度、ダンジョン実習を選択する自分たちには、これらは大いに役立つだろう。
「みんなの装備や武器の強化なんかを、ひとまず優先するっていうのはどう?とりあえず僕のバッグには全部入らないから、ニーナのポーチに保管してもらうことになるけど」
新学期、どちらにしても装備はすべて新調しなければならない。なにしろ学園では、模擬戦用の装備しか所有してなかったのだ。せっかく戦利品があるのだから、それをみんなで使おうとリュシアンは提案した。
「…そういうことなら、わかったわ」
ようやくニーナは納得してくれたようだ。アリスやエドガーも、ちょっとホッとしたような顔をしている。
さて、そうとなれば少しは内容を確認しておきたい。
リュシアンは、ギルドを騒がせたであろう品々がどっさり入ったポーチを戦々恐々と眺めた。
回収した戦利品は、大きく分けて三つ。
魔物の部位、または本体。
鉱石、宝石。魔物の体内で稀に生成される、魔石。
ドロップ品、すなわち魔物が使っていた武具、武器、アクセサリーなどの魔法道具などなどだ。
あまり大きい物やグロイ物をここで広げるわけにはいかないので、とりわけ小さいものや魔道具などをシートを敷いた上に並べていく。一度に全部を鑑定はできないので、ここに出した物だけでも試してみようということになったのだ。
「あれ?」
「どうしたの、リュシアン」
ニーナが何気なくシートに置いた七色の薄い布のようなものを、リュシアンがふと手に取った。
「こ、これってもしかして…」
ハリがあり、かといって硬くなく、すべらかな肌触り。透けるほど薄いのに、驚くほど強靭で簡単に破れない。そして、この色彩。すべて書物にあった特徴通りだ。
リュシアンは、慌てて鑑定の魔法陣を使ってすぐに詳細を調べる。
「やっぱり、これキラーアントの羽根だ」
「羽根?俺も図鑑でしか見たことないけど、キラーアントって羽根なんかないぞ」
リュシアンの独り言のようなその言葉に、エドガーは不思議そうに首を傾げた。逆に、ニーナはそのやり取りに「あっ」と声を上げた。
ニーナは知ってるみたいだね。
「いや…、うん、普通はないんだけど。これは希少種の『羽根つき』と呼ばれる個体のものだよ」
キラーアントは地下型ダンジョンにしか生息せず、どの階層にもいる雑魚モンスターだ。ただ、団体行動を取るのと仲間を呼ぶことで、面倒臭い敵として有名である。そして深層部で稀に発見されるのが、この希少種である。オスだとされているが、詳しいことはわからない。
そして、これはフリーバッグの素材でもあるのだ。
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