世界はそれを嘲笑う

翌日、

私は民家の叔父さんの車で

駅へと運んでもらう。


この一家には感謝の尽きない

思いだった。



「ありがとうございます」



ドアを開き、深々と礼をする。


本当は駅から移動する

資金なんて持ち合わせていない。


それでもここならば

現在地を知る事ができるし、

今後の策も考えれるだろう。


私は疑われないために笑顔で

叔父さんを見送ろうとして、


叔父さんの信じ難い言葉を

聞いた。



「色々世知辛い世の中だが、

僕の家の門を貴方が

叩いたのも何かの縁です。

戻ってからも

元気に過ごしてください」



「え!?」



それは、この脱走で唯一信じた

者に裏切られた瞬間だった。


駅から見覚えのある年老いた

組員が私を指さしている。


一緒にいるのは警官姿の

二人組だ。



「間違いありません。彼です」



「そんな!やめろ!!

離してくれ!!叔父さん!!

なぜ!?なんで!!」


遠く引き離されていく叔父さんは

少し悲しげな表情で

目を合わせない。


警官に腕を掴まれ抵抗するも、

年の差、人数差、すでに結果は

見えていた。



「くそっ!なんで……なんでなんだぁー!!」

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