第2話僕と神童鳴海 中
ではまず、なぜ僕がこんな目にあっているかを説明させてもらおう。しかし詳しく説明すると長くなってしまうため簡単に説明すると
部活が終わり自転車に乗って家に向かう僕の前にいきなり神童が現れ、「お前、いい目をしてるねぇ」と謎の言葉をかけられ、動揺しているといきなり頭めがけて回し蹴りが飛んできたのである。生まれつき反射神経と運動神経がいい僕はなんとかそれを受け止め(びりびりする)、身の危険を感じた僕が神童を取り押さえようとした。
しかし運動神経がいいといっても、一応僕は優等生という部類に入るため、喧嘩をした経験など一度もない。何もできず一方的に神童にぼこぼこにされてしまったというわけだ。
そして現在に至る。
「……振り返って考えるとますます意味わからくなってくるな」
「なにぶつぶついってんだよ、赤やん」
神童の声が後ろから聞こえる。。やっと拘束から解放された僕は、近くの駅まで送ってくれと神童に脅迫もといお願いされたため自転車の後ろに乗せ、最寄り駅に向かっている。
「勝手にあだ名つけないでくださいよ。英語と同じくらい嫌いなんですから」
「俺は本名で呼ぶの嫌いなんだよ。呼び方くらい好きさせろや」
この人が好きにしてないことなどあるのだろうか。反論するのも面倒になり僕が黙っていると
「でほんとに仲間になる気はないのか?」
彼の声がまた聞こえる。
「なりませんよ。なったら日本中の人間から追われることになるじゃないですか」
「案外平気なもんだぜ。俺だってここら辺ふらふら歩いてたけど誰もこっちを見やしねぇし」「見つからなくても追われることに変わりはないでしょうが。大体なんで僕みたいな喧嘩もしたこともない学生を誘うんですか」
「強いからだよ」
神童の意外すぎる答えに僕は驚き、自転車をこいでいるにもかかわらず後ろを振り向くと「危ねぇよ」と僕の顔をつかみ、強引に前を向かせる。
危ねぇのはどっちだ。
「どういうことですか?」
「どうもこうもねぇ。赤やんも俺の武勇伝の一つくらい知ってんだろ」
「ぶゆうでん?…あぁ、中学3年生の時高校生を中心に構成されたヤクザグループを一人壊滅させたとか、武装した警官50人を圧倒したことがあるとかいう嘘情報のことですか?」
「確かにそれは嘘情報だな。あの変なグループつぶしたのは中1のころだし、あの時警官は間違いなく50人以上いたし。全く噂は丁寧に扱ってほしいもんだぜ」
……まじかこの人。とんでもない人と二人乗りしてんだな僕。
「そういう経験を持つ俺にお前素人にしては頑張ってただろ。俺も存分に手を抜いてたが」
「そうでしょうか」
「それに普通の優等生はあんなきれいに回し蹴りをかわしたりしねぇよ。スウェーでかわしやがってこの野郎」、
だから自転車こいでるだろうが!頭揺らすんじゃねぇ!
「つきましたよ神童さん」
「さんきゅ」
神童はぴょんと自転車から飛び降り、最後にもう一度僕の方を向いて
「もしまた会うことがあったら返事聞くからさ、考えとけよ」といい僕の返事を待たず駅に向かって歩いて行ってしまった。
僕はそれを見送り、できることなら会いたくないと言いたい衝動を抑え、家に帰ろうとしたところでふと思い出す。
(神童さんが僕にあった直後に言った言葉…)
お前、いい目をしてるねぇ
あの言葉にはいったいどんな意味が込められていたのだろうか。
次の日、僕の願いは最悪の形で裏切られることとなった。
高校に行く途中ずっと神童にかけられた言葉の意味を考えていた。教室につくまではそのことが頭から離れなかったが、教室の前がなぜか騒然となっている。
「赤谷君!」
教室の前にいたクラスメートの横山寧々が登校した僕に気付き、慌てて駆け寄ってきた。
「あぁ、おはよう横山。なんかあったのか?」
「こっちが聞きたいよ!」
ショートカットの少女であり、みんなの人気者である横山は「あれなに!?」と教室を指さす。
教室を覗くと僕が座るはずの席に誰かがいることが分かった。いや、これ以上わかりたくない。Uターンして退出しようとした僕を「おいっ」と案の定聞き覚えのある少し高い声が引き止める。振り返るとポニーテールで学ランを羽織り、下駄をはいた少年が性格の悪そうな顔でこっちを見ている。
「答え、聞きに来たぜ」
…………
「いや机に座らないでくださいよ」
「このスーパー優等生が!!」
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