重装令嬢モアネット 鎧から抜け出した花嫁/さき
角川ビーンズ文庫
登場人物紹介/プロローグ
◆登場人物紹介◆
モアネット・アイディラ
幼い時のトラウマから、全身に“鎧”を纏う令嬢。
パーシヴァル・ガレット
王子の護衛騎士。寝ぼけると奇行に走る。
アレクシス・ラウドル
モアネットの元婚約者で、国の第一王子。
エミリア・アイディラ
モアネットの妹。キラキラしたものが好き。
ジーナ・アバルキン
隣国に住む妖艶な魔女
コンチェッタ
ジーナの使い魔。にゃんこ。
◆◆◆◆◆◆◆◆
カタカタと
出がけに宿で買った、どこにでもあるような
そんな便箋にペン先を
だがモアネットは全身
ゆえについた
差出人にその渾名を書いてみようか、そんな
「書かないのか?」
とは、向かいに座るパーシヴァル。
さすがに今のモアネットには軽口を
そんな彼に見つめられ、モアネットが
「エミリアに書こうとしたんですが、何を書いて良いのか……。書き慣れてないと
強がりだと気付いているのだ。いや、気付いたのは彼だけではない。アレクシスもまた労わるような表情を浮かべ、モアネットの
みんなモアネットの胸中に気付いている。
かつて親しくしていた妹に手紙一通出せない姉。
そもそも、今まさにエミリアがいる王宮に向かっているのだから、本来ならば手紙など書く必要は無い。それでも便箋を用意したのは、
そんなモアネットを案じ、パーシヴァルが再び口を開いた。
「モアネット嬢、書き慣れていないなら
「練習ですか?」
パーシヴァルの提案に、モアネットが兜ごと首を
『手紙の練習』など聞いたことが無い。だが彼の表情は
「その……練習で手紙を書くなら、身近にいる人宛ての方が良いと思うんだ。……それで、俺とかはどうだろう?」
「パーシヴァルさんに手紙? この
「もちろん俺からも返事を出す!」
「まさかの文通!?」
いったいどうして! とモアネットが声をあげる。
それに対してパーシヴァルが説明しようとするが、それより先に隣に座るジーナが
「モアネット、それなら私と文通しましょ。毎日手紙を書くわ」
「ジーナさんまで……。そもそも、なんで馬車の中で顔を合わせてるのに手紙を書くんですか」
「私の手紙は最後に魔女のワンポイントアドバイス付きよ」
この距離での──そもそも距離もなにもジーナとは
モアネットは今までアイディラ家に残されていた書物でしか魔女の魔術に
「……それならジーナさんと文通します」
「あら
「俺だって
ジーナに張り合うようにパーシヴァルが声をあげる。そんな彼を、いったいどうしたのかとモアネットが兜
文通しようと提案してくる彼の
だがパーシヴァルの異変は今になって始まったものではない。思い返してみれば今朝から彼は落ち着きが無く、見つめてくるくせにこちらが見つめ返すと
その切っ
そこまで考え、モアネットがそういえばと
彼は
もしもそれが関係しているのであれば……。
「パーシヴァルさん、さては昨夜……」
「モ、モアネット嬢……?」
「あんまり寝てませんね! 本格的に寝ぼけて抱き着いてくる前に寝てください!」
声を
憐れパーシヴァルは不意を
そんなやりとりに、クスクスと笑う声が割って入ってくる。もちろん、一連を静かに見守っていたアレクシスだ。彼は深い茶色の瞳を楽し気に細め、モアネットが視線をやると
「笑うなんて失礼ですね」
「ごめんよ。でも手紙の話をしてたら昔を思い出して」
それで、とアレクシスが笑う。曰く、善良な王子として順調に過ごしていた
だがそれはあくまで王子としての務めだ。彼の口調に楽しんでいた様子は無く、きっと
それを聞きモアネットが思い出すのは、かつて彼から
「アレクシス様も書きますか? 一通ぐらいなら返事を書いてあげますよ」
「モアネット……。ありがとう、でもやめておくよ」
溜息交じりにアレクシスが首を横に
その表情は痛々しく、見ているこちらの胸が痛みかねない。かつて王子として手紙を書いていた思い出と、不運の
切なげに視線を
「手紙を書こうとすると、三本に一本の確率でペンが
と、まるで遠くを見るように瞳を細めて呟いた。
そんな馬車の中、モアネットは
彼の不運の呪いが解けたら、自分も手紙くらいは書けるようになるだろうか……そんなことを思い、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます