-第17話-【未来の君へ〜瞬間〜】

「届けぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーっ!!」

巻取りを全速力で行い、巻きとり部分からは火花が散っていた。そのままの速度でコマの手が、触れ…た。その手を、掴む。まずい、このままだと地面に着く。滑るしかない。コマが無事かは分からないがこのまま行くしかない。緊急時なのに普段より冷静な自分に驚いた。地面まで、あと3m、2、1!

『ザザザザザ!!!』

『ゴンッ!ズーーー!!』

俺の腰を保護しているパッドが地面をこすれる音と、もう一つ、鈍い音がした。骨折は確定だ。そう思った矢先、

『ババババババババババ!』

再び銃声の音が聞こえた。まずい。地面をずっていればそのうち敵が撃ってくるバレットが当たる。畜生、ここまでか…。その時、

「応援射撃、撃てーーーーッ!」

その直後、下からの銃声に加えて、前方からの銃声が下に向かって響いた。学防隊の応援射撃だ。行ける。手の中のスイッチを操作し、一気に速度を早める。着陸予想地点には突っ込んでも大丈夫なように保護装置シートが立てられていた。突っ込んでやる。骨折なんて安いもんだ。目の前が真っ白になった…

『…ばさ、翼!』

ん?なんだこの声、俺はさっきまで飛んでた筈…。まさか、死んだ!?目を開けてみる。俺は寝っ転がっている。生きてる。前を見ると大きな保護装置シートが立っていた。そして隣を見ると…

「コマっ!!」

隣には血だらけのコマがいた。

「おい、生きてんだろ。なあ、起きろよ。」

返事はなく、コマの体を回すと横腹から胸のあたりにかけて血がどくどく流れていた。さっき地面をすべらせた時にやっているっぽかった。周りで見ていた人がすぐに救護班を呼び、コマは地下通路を使って病院に搬送された。その時、

『学校棟、放棄!繰り返す!学校棟、放棄!もう戦力が限界です!保護施設棟にいて援護できる分隊は至急応援願う!』

コマのことが心配だが、今はそれどころではないのだ。周りを見渡すと保護施設棟は今いる人員で何とかなりそうな敵の人数だ。

「俺、学校棟の援護フォローに入ります。」

「おう、行ってこい。こっちは任せろ!」

「お願いします。」

そう言って手に持っていた無線に叫ぶ。

『Dー01分隊より1人援護に入ります。』

『司令より、了解しました。』

今出来ることを、一つ一つ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る