-第16話-【未来の君へ〜蜘蛛の糸〜】

「作戦は…これを使うぞ。」

そう言って俺が指さしたのは自分の腰に装着してあるワイヤー式移動武器【Entet The Sky】だ。部屋をまわり、避難通路に行ける人は行ってもらい、火災などで行けない人はこれで運ぶ。

「Dー01より司令、火災の出火位置と襲撃者の居場所を教えてください。遅レ」

『こちら司令、了解しました。タブレットに位置情報を送信しました。そちらを確認してください。オワリ』

タブレットを確認して、火災の近くの部屋にいる人数と照合すると、大体20人くらいを、これ《Enter The Sky》で運んでやらなきゃいけない。

「コマ、行けるか?」

ワイヤー噴射口を確認し、

「行けるよ。」

そう言った。やるしかない。その直後、

『学校側3階放棄!繰り返す、学校側3階放棄!襲撃者が多すぎて間に合わない!死者、4人!重傷者10人!』

嘘…。たった10分だぞ。その間に死者4人って…。隣を見るとコマも驚いていた。

「行くぞ。」

「お、おう。」

誠さんは大丈夫だろうか。心の中がどんどん不安に埋もれていく。でもやらないとガキどもを救えない。俺は無線の周波数を保護施設の緊急放送用に合わせる。

『ピー!』

緊急放送の警報音が施設中に響く。

「待機中の全児童に連絡。今から呼ぶ部屋を除く生徒は至急避難通路へ移動せよ。対象の部屋は、103号室、108号室…。」

俺の声が約一秒遅れで施設中のスピーカーから流れた。

「5部屋あるから、俺が三部屋分回る。コマは2部屋分回ってくれ。」

『了解。』

もう無線に切り替わっていた。流石コマだ。

一つ目の部屋、ドアを開ける。中には怯えている子供が2人居た。

「学防隊です。今から君達を外に出します。こっちに来てください。」

子供たちはすんなり従ってくれた。要救護者を担ぐために標準装備されている保護装置を子供2人に付け、担ぐ。こいつ(Enter The Sky)が3人分持てることを願う。それしかない。俺は手の中にあるスイッチを押した。その後、腕の先につけられたワイヤー噴射口から勢いよくワイヤーが飛び出て、近くのビルの屋上に突き刺さる。ワイヤーが張っているのを確認し、ワイヤー巻き戻しのボタンを押し、2階から飛び出た。敵は撃ってはきたが、狙いが定まらず俺の後ろを飛んでいった。キュイーン、とワイヤーを巻く音が響く。その後間も無くビルの屋上についた。

「ここで待ってて。」

そう言って再び元の位置にワイヤーを飛ばし部屋に戻る。コマより一部屋分多いから急がないと。二部屋目の子達もなんとか無事に運び終わった。ふと向こうを見ると、コマもふたりを向こうにおいてきて、こちらに向かってくる…刹那、

『パンッ!プシュー!』

一気にコマが落ちていく。ワイヤー巻きとり部分を撃たれてたっぽい。二本のワイヤーも耐えきれなかったらしく、切れた。

「コマっ!」

気づいたら体は動いていた。

『キィィィィィン!』

ワイヤーを最大の出力で巻いていく。頼む。間に合ってくれ。蜘蛛の糸のように細いそのワイヤーの速度は高速道路を走る車くらいは出ていたと思う。コマの手を掴みに行く。チャンスは1回。下からの銃声の音がかき消されるくらいの声で叫ぶ。


「届けぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーっ!!」

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