-第7話-【腐った世界】
俺が言った後にコマが
「続きまして、何故、我々が戦わなければならないのか、です。」と遮るように言った。やっぱり、言わない方がいいってことだよな。無理やり自分を説得させ、俺は前を向く。
「えー、皆さんは、学校で赤紙って習ったよね?」
コマの問いかけにみんな頷く。
「おっけー、じゃあ、赤紙ってどんなのだっけ?」
コマが問うと、先頭の方にいたチビが
「せんそうするためにこいってことでしょ!」
と自信満々に言った。んー、まあ、あながち間違ってはないんだけどな。
「うんうん。でもね、あれは兵隊さんが足りなくなったから、作られたんだよ。」
兵隊さんとか、幼稚園児相手かよ!!と思わずツッコミを入れたくなった。
「で、それがこことどう関係してるかというと…」
コマが間を開けた。了解だ。俺はポケットからB5の紙を取り出した。
「ここにも、赤紙があります。」
コマは淡々と言ったが、1年生は皆驚いていた。いや、補足しないとやばいヤツらになるよ、俺達!
「あ、でもね、この紙が出る時は、人数がたりなかった時だけだから、安心してね。」
そう。はじめは皆、カッコイイからと言い、学防隊に入る。しかし、訓練の辛さや、実践でのあまりに残酷な光景を見たりして、最後は半分になってしまうのだ。俺達の代も、はじめ500人いたのに、今となっては249人だ。ついこの前まで250人と、本当に半分だったけど、前回の重症になった子が、辞めてしまった。そして、人が足りなくなると赤紙が出される。だが、強制的にしてしまうと、人権の侵害に当たるからと、赤紙の中に、「尚、保護者による賛同が得られない場合、本書の効力はなくなる。」という条文を追加した。だが、ここでいう保護者は児童保護施設の館長を指す。その館長は、出来るだけ養う人数が少ない方が、楽でいい。というこれまた狂った奴だった。どうやらテロによって日本は大和魂まで壊されてしまったらしい。いや、待てよ。その弱みを使って人を集める俺らにも、とうの昔から大和魂がないのかもしれない。それはさておき、そんなこんなで招集された1年生達ははじめ怖気づいているが、それでもここは全国的な組織の本部なのだ。装備も最高レベルのものが揃っている。実際、ここで使わなくなったものを、地方の学防隊支部に譲渡していって、武器の供給を行っている状況だ。それを聞いて、少しホッとしたのか、その後の説明は速やかに終わった。否、終わったように見えた。
まさか、襲撃者達が近くに来ているとは思わずにだ。
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