4話ー3 憎悪と慈愛と
王女テセラとそれを守護・支援する者達。
対するは導師ギュアネス・アイザッハの手の者達。
【
地球圏の【
この時代において——【
ゆえに、その技術による支えを失った世界は、恐ろしいほど
十六の内除外出来る【
しかし、その三分の一を導師側に奪われた
【
さらにその【
【三神守護宗家】を初めとする、各国防衛機構は連携を強め——何としてでも魔界の衝突回避を成功させようと、あらゆる策を講じて備えていた。
しかし——ここに来てさらに事態の深刻さに拍車をかける状況が、【
『こちら
残された五つの【
だが、その地点に野良魔族の反応が重複して確認され——回収任務がいっきに難度を跳ね上げる。
対魔部隊に続いて現地到着した金色の王女は、すぐに反応の探知に入った。
「ローディ君!野良魔族発生地区の中心!……【
さすがに王女も、ここまで予想外の事態に困惑が隠せない。
『テセラ!野良魔族はこちらで何とかします……!その隙に【
ヤサカニ裏当主は、この事態を別ルートから得た情報によって推測していた。
そのためこの【
さらに、先の赤き魔法少女の件を鑑み——宗家専用機体【
「確かに情報通り——野良魔族まで同時発生するとは……。しかし、これは……。」
その異変に対し、ヤサカニ家裏門当主はただならぬ事態を想定する。
現在発生を確認している野良魔族、それらのタイプに
【
人型をベースにした、可変機構を持つ点は空戦型と同様であるが、こちらは変形後に
現在の日本は、
その東西経路を結ぶ陸路——及び海を
日本所有機体の高機動形態は高速車両形態——重火砲戦闘形態とが存在する。
が、宗家で用いる【タケミカヅチ】は現地への最速での移動を考慮し高速車両形態のみで運用される。
人工オリハルコン製硬質退魔弾を内蔵する、重機関砲は【ヤタガラス】共通とするも、地上戦においては市街地戦仕様とし――近接白兵戦武装である、刀形状の大型超振動ブレードで固められる。
宗家が誇る機体の一角――高機動形態から、瞬く間に10m近付くの人型へ変貌を遂げるそれ。
雷神とも武神とも言われる名を冠する機体。
魔を屠るに相応しき存在が、大気揺るがす白刃を翳し――咆哮を絶叫へと変えながら、野良魔族を一体……また一体と浄化していく。
しかし——明らかにそれらは、今まで遭遇した物とは格が違っていた。
「野良魔族の反応に、まさかとは思いましたが……。間違いなく高次霊格個体……!」
日本国内で大量発生する野良魔族は、その多くが霊格が通常より高位の個体が中心であった。
それでも、雑魚あるいは格下の部類であったため、宗家の対魔部隊で充分対応が可能であった。
だが今、ヤサカニ裏当主が相対するのは——【
――純粋に高霊格の魔族である。
『聞こえますかテセラっ、対魔部隊が今相対している魔族は、意図的に出現させられた疑いがあります……!恐らく来ますよ……彼女が!』
ヤサカニ裏当主の思考が、可能性の高い戦場の先を予見し注意を促す。
その言葉に警戒をあらわにしながらも、金色の王女はかろうじて災魔生命体への変化直前で、【
が――
「その【
高速で振り抜かれる爪状魔力刃。
大気へ電子の
「——っ……!
衝撃の瞬間、障壁を張るもまたもや弾き飛ばされた王女は、背後の建築物に激突する。
衝突部位にクレーターを刻まれ軋む建築物――魔法対物障壁が間に合い、軽い打撲を被るも何とか体勢を整える王女。
ほとんど不意であった攻撃の元——自分が今いた場所に赤き烈火が滞空していた。
「赤い——【赤煉の魔法少女】……!」
立て直した王女——その様を見た瞬間、脳裏に浮かんだ言葉を
「上手く衝撃を逃がした様だな……。——無用に戦闘するつもりは無い。」
赤煉と呼ばれた魔法少女は、
「【
交渉——と言うには条件が一方的である。
が、どちらにせよそれを渡せと言っている少女に、金色の王女も後には引けない——引くわけにはいかないとの剣幕で
「あなた達は導師ギュアネスの使いでしょ?……私達が、地球と
強い瞳を真っ直ぐに、赤煉の魔法少女へ向けて——王女も負けじと自分の意志と言葉をぶつけて行く。
すると、その敵対者からまさかの返答が返された。
「——地球と魔界が……衝突……?初耳だな……。」
嘘は言っていない様である――だがそれを知った赤煉の魔法少女は好都合とばかりに、その世界滅亡から得られる物……自分の利を確信しさらに告げた。
「そうか……導師が任務をこなせと言っていたから、私は従っていた。——そうと聞いたら、ますますこの任務を完遂する必要が出てきたな……。」
その言葉を終えた瞬間、王女をも包み込む憎悪が増大する。
一瞬その巨大な憎悪に、心が恐怖でへし折られそうになるも耐え
「……ちょっとまって……!二つの世界が衝突すれば、世界が滅びるんだよ!?なのに……どうしてそれを手助けしたりなんか——」
ゆえに当然の疑問を、少女に問いただそうとした時――周囲に拡散されていた巨大な憎悪が敵対者の言葉と共に、王女一人に集約され突き刺さる。
「……世界が滅亡するならば、宇宙と地上に存在する全ての魔族を、まとめてこの世界から駆逐出来るだろうっっ!!」
爆撃の様な突撃が王女を襲う。
何度も受けたはずの赤き突撃が今までの何倍も重い。
突撃と共に王女は背にした建造物へ、対物障壁を貫通して押し込まれ――今まで障壁に守られていた分のダメージをまともに食らってしまう。
「……か……はっ――」
想像を絶する衝撃に王女の意識が遠のく。
先の戦闘での失敗から、ローディが半物質化しない事で対応していなければ、致命的なダメージを追うことになっていただろう。
その途切れそうになる意識の中――王女は自分の中に感じていた眼前の魔法少女に対する違和感、その一つに対する答えがおぼろげながらに導き出された。
「(……この……子……私とか……じゃない。全ての魔族を……憎んで……い――)」
その解を導くかどうかの所で、金色の王女の意識が消え失せる。
『テセラ……!聞こえますか!――テセラ、退避しなさい……!』
ただならぬ状況に、いつもは冷静なヤサカニ裏当主も未だ増殖する高霊格魔族らを
今この状況――敵対者の対象は【
そう――目の前の魔族の王女を駆逐すると言う目的が追加されたから。
マスターの絶対絶命の危機――ローディは使い魔としての使命を果たすため、
「テセラ!目を覚ましてっ!このままじゃ……テセラっっ!!」
使い魔の必死の呼びかけも虚しく、王女の意識は戻らない。
そして、王女の障壁を全て砕き――赤き魔法少女はその憎悪に染まる手を、気を失ったままの少女の首へ伸ばし締め上げた。
「全ての魔族は消えてしまえばいい……。全て……スベテ……スベテ……ヲ――」
締め上げる手に力が込められる。
赤き魔法少女は先ほどの冷静さが
『テセラーーー!!!』
ヤサカニ裏当主の悲痛な叫びが響くも、その守護の手が届かない――
その場にいた全ての対魔部隊員が、最悪の結果を想像したその時、
「――全く……アタシが撃滅する前にやられてんじゃないし。クヒッ……。」
どこからともなく響く声。
赤き少女の憎悪とは違う、狂気の宿った声。
「愚かなる雑魚魔族より生まれし、哀れなる――人ならざる少女に、
刹那――赤き魔法少女に向けて主への
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