喫茶店にて、徒然なるままに
北見 柊吾
喫茶店にて
「待った?」
だいぶん溶けてなくなったアイスコーヒーの氷をストローで転がしながら僕は首を横に振る。
ふぅん、そう。
いつもの口癖とともに僕の向かいの席に座った紗弥は店員にアイスコーヒーを頼んだ。
自分から呼び出しておいて、身勝手な奴だ。その辺りは何年も変わらない。
約束の時間からは六分も過ぎている。僕がアイスコーヒーを注文してからは二十分以上も経っていた。
「で、用事って?」
僕の声が聞こえなかったかのようにポーチから携帯を取り出した紗弥は誰かとLINEをし始めた。僕は、なぜここにいるのだろうか。人を待たせた挙句、その本人を目の前にしてもまだ余裕の表情でいられる理由が、僕にはわからない。
しばらくして、ようやく紗弥の両耳からイヤフォンを外す。僕はもう怒りもせずに同じ言葉をもう一度繰り返す。
「用事って?」
「いやぁ相談があってさぁ」
先程取ってきたシュガーを手でもてあそびながら、紗弥の言葉に僕は耳を傾ける。その間に紗弥はレポート用紙と大量の文字が印字された紙の束を鞄の中から取り出した。
「あのね、色々わかんない事もあってさ、意見聞きたいなぁて思って。あとネタも欲しいし」
なるほど。色々聞いてそのまま提出する気か。まぁ利用されるのもまた一興かもしれない。テキトーに自分を納得させ、反抗してくる自分の意思を必死でなだめる。
これから、僕は紗弥にこの喫茶店にて自分の独断と偏見に満ちた考えを延々と語ることとなる。
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