風呂とアヒルとおっさん
二年ほど前に普通二輪の免許を取ってバイクを買って以来、あちこちの温泉やスーパー銭湯に行くようになった。
普段、眼鏡を掛けている僕は風呂に入る時には眼鏡を外していが、露天風呂の景色を楽しむ為に風呂用眼鏡を買ったりもした。
その日はスーパー銭湯の極楽湯に初めて行った。
浴場に入ると、なにやら大量の黄色いものが浮いている風呂がある。湯けむりで良く見えないが、変わり風呂とかイベント風呂で柚子か何かが浮いているのだろうと
近づいてみた。
そにには、大量のゴム製のアヒルが浮いていて、中には数人のおっさんとじいさんが入っている。
そういえば、さっき「キッズデー」とかどっかに書いてたな……子供は誰も入っていないけども……。
そしてさらにおっさん追加。僕はおっさん達と一緒に大小様々なアヒルの大群に囲まれた。アヒル風呂に入ったのは僕は初めてだったけど、変わり風呂として結構メジャーなものだったことを後で知った。
周りのおっさん達はどんな気持ちでこのアヒル風呂に浸かっているのか……。アヒルを手に取ってぎこちなく玩んでは放鳥するおっさん……アヒルを握って下部にある小さい穴からピューっとお湯を出している排尿補助じいさん……など、思い思いにアヒルと戯れている。
僕もそばにあったアヒルを手に取ってみた。握ると少しお湯が出た後に、キュゥッと鳴き声がした。僕にはそれが「おとなは、だれも、はじめは子供だった」というサン=テグジュペリの言葉に通訳されて聞こえたのだった。
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