箱の中身は何だろな
数年前の初夏の頃だったか、とある公園を散歩していたら池で釣りをしていた薄毛のおじさんを見かけた。そんなおじさんはいっぱいいるけど、その池は魚を釣ることや餌をあげることは禁止されていた。
おじさんは釣り竿をグイグイと引いていた。僕は、そんなに大物がかかったのか! と見ていたけれど、どうやら池の中で釣り針が引っ掛かっただけの様だった。
おじさんはおもむろに服を脱ぎだし、遊泳も禁止されているその池の中に飛び込んだ。
釣り針を外して、平泳ぎで戻ってくるおじさん。水面から出るおじさんの頭は、髪の毛がまばらにペッタリと張り付いている。いま初めてこのおじさんを見た人は、「すわ! 未確認生物発見!」と驚くかもしれないと思った。
おじさんが池の岸に上がってくるまで見届けた。まあ針が外れて良かったね、釣りしたり泳いだりしたら駄目なんだけどね。と思いつつ僕はまた公園を散歩した。
公園を一周して戻ってくると、おじさんはもう帰るところらしかった。
釣り竿を持ち、肩にはクーラーボックスを提げていたおじさん。そのおじさんが着ていたTシャツ……僕はそいつに目が行った。
ゴーストバスターズ!
黒い下地に赤丸に斜線、その中から白いマシュマロマンが飛び出ている柄のゴーストバスターズTシャツをおじさんは着ていた。
もしかすると、池にはオバケがいっぱいいたのだろうか……? あのクーラーボックスの中は、おじさんが捕まえたオバケでいっぱいになのでは……。
ゴーストバスターズのテーマソングを脳内再生する僕は、おじさんがオバケ退治で大活躍する様を思い描きながら公園を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます