ACT42 宣伝キャンペーン

 報道陣の質問に答えている合間にも慶は何度も腰や肩に手を回してくる。

「お二人は仲良いですね~」

 どこぞの芸能レポーターが貼り付けた笑顔で言う。

「ああ、もち――」

「ええ、いいですよ」

 慶の言葉を遮り、営業スマイルと共に「友人」を強調して答える。広報戦略だろうがなんだろうが好き勝手に噂なんか立てられてたまるものか。

 あぁ、どうかこの映像を赤崎くんが見る事がありませんように!

 私はそう切に願った。


 …………

 ……

 …


 映画のキャンペーンでのインタビュー映像はその日の夜からニュースとして全国放送で流された。

 あーあ、もうこれ絶対に赤崎くんの目に入るじゃん! 日本って他に流すべきニュースはないの? ほんとにつまらない国。平和故に何もないのか……それにしても何で国政関連のニュースよりも私と慶との熱愛報道? に裂いている尺(時間)が多いのは問題ではないだろうか?

 まあ、知った事じゃないけどね。


 でもなんで熱愛だのラブラブだのピンクの文字が躍ってるの!? あれだけ友人って念押ししたのにぃ~。一番大切なところがカットされてるじゃん!? だからこの業界の人って信用ならないのよね。

 向こうもお仕事だって事は理解してるんだけど、やっぱり敵視しちゃうよね。

 昔散々書かれた事もあったし……。トラウマを思い出しつつ、これからの展望について思いを馳せた。

 現実逃避と言うヤツである。


 案の定その日のうちに拡散された情報は反響を呼んだ。

 その日の夜。スマホは鳴りっぱなしだった。


 冴子:大変そうですがお気を確かに。

(気は確かですけど!?)

 鈴音:マジウケるww

(笑ってんじゃねぇよ!)

 友香:ご愁傷様です。

(死んでないからね!?)

 花楓:みんな何を騒いでるの?

(分かってないなら話に入ってくるなよ……)

 瑞樹:ドンマイ(○゚ε゚○)プププー

(バカにしやがってぇ……)


 グループLINEは鳴り止まない。それでも一人だけ連絡の来ないメンバーが一人。

 逢里詩乃。友達だと、思う……けど、よく判んないのよねあの子。

 この前言われた事の意味もいまいち判ってないし。まあ、みんなの共通認識通り不思議ちゃん――という名の変人という事は理解しているつもりなのだけど、それでもやっぱり理解に苦しむ。

 私、見限られたのかな? この前の雰囲気からしてそんな感じだったけど……。


 はへぇと、魂も一緒に抜けていくかのような盛大なため息を零す。

 最近、ため息ばっかりしてる気がする。

 もう寝ようかな。

 グループLINEに「おやすみなさい」と打ち込んだ瞬間スマホが鳴った。


 綾人:今から話せる?


 私は即座に返信を打った。


 結衣:うん。いいよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る