ACT28 二時間前
シェリル・マクレーンとの遭遇から2週間。王子監督の台本を完璧に頭に叩き込み、暗唱できるレベルにまで達していた。
しかし、未だにシェリル・マクレーン以外の共演者が判らないままだった。
王子監督の完全秘匿主義には手を焼かされる。外部に情報が漏れた段階で作品の驚きが半減する。というのが彼の持論だ。
正直言って情報漏洩はこのご時世、仕方のない事だと思うのだが、それを許さず、徹底した情報規制を敷く。現に今まで一度たりとも発表前に特ダネとして報道された事は無い。
だが、まさか身内にまで秘密にするとは、これでは知りようがないではないか。
私は相手と役のイメージを照らし合わせて芝居するタイプだからかなり困惑している。
相手役のイメージが全く掴めていない。
しかし、そんな悩みも今日までだ。
ついに公の場で王子監督最新作の制作発表が行われる。メインキャスト同席で。
もちろん私も参加する。あとシェリルも一緒だ。
メインのキャストは当日、制作発表まで二時間を切った今ですら教えてもらえていない。
急く気持ちを落ち着かせながら制作発表まで時間を彼氏と潰している。
「なぁ、ほんとに楽しいのか?」
「うんうん。楽しいよー」
「棒読みじゃねぇか!」
「そんなことないよー」
「もういい」
「怒らなでー」
「機嫌取りの時まで棒読みってなんだよ」
呆れたように言うとカグラ様……じゃなかった! 彼氏はため息を吐いた。
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