第二幕 映画撮影と超新星
ACT24 打ち上げ
文化祭から二ヶ月あまりが経った。
完全復活を果たした、私こと新田結衣は自宅に友人を招き、文化祭の打ち上げを内々に執り行う事にした。
メンバーは瑞樹、花楓、友香、鈴音、冴子に詩乃(本日欠席)。そして私の彼氏である赤崎綾人の計七名。
現在、私――私たちは友人からの質問責めにあっていた。
女の子って恋バナ好きだよね。
恋バナをする側はいいが、その対象となるのは嫌だなとつくづく思った。
「てか、シノッチなんで来てないの?」
「お仕事だって」
「お仕事? バイトでしょ。休めばいいのに」
「鈴音と違って真面目なのよあの子は」
「あーしも真面目だし」
「知ってる、知ってる。ギャルキャラきちんと守ってエライ、エライ」
「バカにしてるでしょ?」
…………
……
…
今まではなかった喧騒。みんなといると自分が芸能人だって事を忘れてしまいそうになる。それ自体は悪い事じゃないんだけど……今日の集まりが楽しみでちょっと寝不足気味。
「子どもかッ!」って高野さんにはツッコまれ、「案外可愛いところもあるのね」と松崎さんには何時ぞやの仕返しにからかわれた。
結果として、全くと言っていいほど台本が頭に入っていなかった。
私は可愛いだけが売りな女優じゃない。自分で言うのもなんだけど、演技力には定評がある。そしてそれ以上にスタッフに好かれる。
その理由は台本を覚えるのが速い事だ。
一言一句頭に叩き込む。
相手の
でも勉強は苦手。好きこそものの上手なれってね。
でも今回はダメ。
頭の中がみんなのことで埋め尽くされてて、科白の入る余地がないの。
そんな私は嬉々として打ち上げを盛り上げていた。
「ユッキー! スマホ鳴ってる」
「ありがと」
行方不明になっていたスマホは、何故か真希が見つけ出してくれて私の手元に戻ってきた。
私は見つけてくれたお礼に「許してあげる」とだけ言ってあげた。
これは借りである。いつか返してもらわないとね。
戻ってきたスマホを受け取り、電話に出た。
『どうしたの?』
相手は松崎さんだった。
『結衣、今から言う場所にすぐ来なさい!』
『えー。今日は仕事入れないでって言ってたじゃん』
頬を膨らませる。
『何でもいいから来なさい!』
何処か焦ってる?
『王子監督が今すぐ逢って、話がしたいって』
『ウソ……ヤバくない?』
何がヤバイって王子監督はキャストを発表した後でも容赦なくキャスト変更をすることで有名だ。
自分の求める演技が出来なければクビ。比喩ではない。本当にクビにしてしまうのだ。
そんな人から呼び出し!?
『私、台本所か自分の科白すら入ってないんだけど……』
キャスト発表直後にクビ!?
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