第一章 さらなる広い世界へ
その1-1 どうしてこうなった
「どーなってんだこりゃ……」
意志の強そうな形のいい眉を顰め、目の奥に『動揺』と『困惑』の色を浮かべながらカッシーは呟いた。
時刻は夕刻。にも拘らず、鬱蒼と生い茂る背の高い大木のせいで辺りは薄暗い。
一面、樹、樹、そして樹……森の奥ってことは間違いないが――
少年はやれやれと顔を抑えて俯いた。
「さてねえ……ハイキングに来た覚えはないけどな?」
パチパチと火が爆ぜる音が聞こえる中、焚き火をぼんやり眺めていたこーへいがそんな少年の呟きに相槌を打つ。
その表情にはやはりというか相変わらずというか、カッシーが浮かべていた『動揺』や『困惑』の色は毛ほども見えなかったが。
「なあ、こーへい……」
「んー?」
しばしの沈黙の後、少年は意を決したように口を開く。
「どうしてこうなった……」
「……そりゃなー?」
言わなくてもわかんだろ?――
と、くわえていた煙草からぷかりとわっかを浮かべながら、クマ少年は近くの朽木に腰かけて、こんな状況にも拘わらず鼻歌交じりで爪の手入れをしていた女性へと顔を向ける。
旅用のシンプルなドレスに身を包んだその小柄な女性は、非難の視線を向けてきた我儘少年に気が付くと、アップにしてまとめた明るい茶色の髪をバツが悪そうに掻いていた。
だがややもって口を尖らせながら、面倒くさそうにカッシーを睨み返す。
「なーによ、辛気臭い顔してんわねアンタ。言いたいことあるならはっきり言えば?」
「ざけんなボケッ! 誰のせいだと思ってんだっつーの!」
「だから言ってるじゃん、こっちの方が近道だったんだって」
「あのな、これのどこが近道だ!」
そもそも道すらないだろ!――
額に青筋を浮かべ、お決まりの如くブチ切れて短気な少年は『いっ!』と女性を睨みつけた。
そしてつい数刻前に馬車がガッタンガッタンと飛び跳ねながら生み出していた轍を指差す。
そう。どう見てもその轍の先は道でもなんでもなくただの藪だった。
道らしき道など周囲には見当たらない。
それもそのはずだ。だって馬車はただ単に道を逸れて森の中を突っ走って来ただけなのだから。
びしっとカッシーが指差したその先を見て、女性は僅かに言葉を詰まらせたが、だがすぐに負けじとカッシーにジト目を返す。
「よーく見れば獣道に見えなくもないじゃない?」
「見えるか! そもそも獣道を馬車で通るな!」
「あーもう、うっさいなー! でもこういう予定外の失敗とかさ、これこそ旅の醍醐味ってもんでしょ?」
「あ゛?!」
こ ん な 醍 醐 味 な ん て 金 も ら っ て も い る か!
悪びれる様子もなく、そう宣った女性に対し、カッシーはビキビキと音が聞こえそうなくらい額にもう一つ、いや二つほど青筋を追加させ、引きつった笑みを浮かべる。
「ちょっと何よその顔ー? 悪かったわよ、さっき謝ったじゃん」
「いつだ? いつ謝ったよアンタ!」
「は? さっきはさっきよ。アンタ細かいこと気にするのね、男らしくないなあ」
「はぁ!?」
くっそ、こいつ王女様だっていうから遠慮してやってるのに調子に乗りやがって――
途端ガバリと立ち上がり、カッシーは拳を震わせながら女性に歩み寄ろうとした。
だが傍らにいたこーへいが慌てて少年を羽交い絞めにしてそれを制す。
「おーい、落ち着けってカッシー、相手は王女様だぜ?」
「放せこーへい! あのイカれた王女に『男女平等ヘッドバッド』を食らわせたい! すごく食らわせたい!」
「へぇ~やれるもんならやってみなさいよ名誉騎士様ぁ? 返り討ちにやるわ」
「ん だ と こ の ち ん ち く り ん !」
ちょいちょいとドヤ顔で手招きした女性に、カッシーは八重歯を覗かせながら犬のように吠えた。
「バカが感染るから余所でやって欲しいわね」
と、馬車の階段に腰掛け、本を読んで時間をつぶしていたなっちゃんは、そんな二人の醜い罵り合いを蔑むような視線で眺めながらぼそりと呟く。
「はぁぁ~……」
同じく彼女の隣ではらはらしながら様子を眺めて日笠さんは、すっかり板についてしまった苦労人の溜息をついて肩を落としたのであった。
本当にどうしてこうなったのかしら――と、やり切れない思いを抱きながら。
♪♪♪♪
前略。
皆様、お身体お変わりないでしょうか。日笠まゆみです。
弦国首都ヴァイオリンにて、マーヤ女王と共に国を揺るがす大陰謀劇を阻止し、なんとか無事にオケの部員である浪川君を救出することができた私達ですが――
ええっとそのぉ……ご覧のとおり現在路頭に迷っている真っ最中です。
まったくなんでこんなことに……一体ここどこなんだろ?
え? はあ、そうですよね。
どうして私達がこんな森の中にいるのか。
そしてカッシーがギャースカ言い争っているこの
まずそこから説明しないといけませんね。
それを説明するには、もう少し時間を遡らなくてはなりません。
きっかけは五日前、カッシーが名誉騎士の称号を贈られることになったあの授与式での事でした――
♪♪♪♪
五日前。
ヴァイオリン城、謁見の間―
「マーヤ!」
招かざる闖入者の水入りにより一時中断したものの、その後は順調に進み授与式はつつがなく終了。
続いて、少年少女達を称える宴席が始まるや否や、その『闖入者』は待ってましたとばかりに、マーヤへと駆けていく。
「エリコ!」
駆け寄ってくるその女性に気づくと、マーヤも傍らにいたサクライに頷いた後、再び女性を向き直って彼女の名を呼んだ。
そして顔一面にぱっと明るい笑みを浮かべ、両手を広げて女性を歓迎する。
小柄な女性はマーヤの胸元に勢いよく飛び込むと、熱い抱擁と共に親友との再会を噛みしめた。
「ちょっとエリコ、苦しいって……」
「アハハー久しぶり! 元気だった?」
と、咽ながらその背中をパンパンと叩いたマーヤに対し、ようやく力を緩めると彼女は顔を上げて尋ねる。
「おかげさまで変わりないわ。貴女は?」
「もー毎日暇で暇で、退屈で仕方ないってカンジ?」
片眉を吊り上げマーヤの問いに答えると、女性は辟易した様子で大袈裟に肩を竦めてみせる。
変わってないなあ――そんな彼女を見てマーヤは心底嬉しそうに笑ったのだった。
「息災そうだねエリコ」
傍らでその再会を自分のことのように眺めていたサクライも、懐かしむように微笑む。
「そういうアンタも元気そうじゃない、リューイチロー」
「しかしまぁ君らしい突然の来訪だ」
「そりゃあんな手紙読んだらじっとしてられるわけないでしょ?」
そう言って、胸元からちらりと一通の手紙をチラつかせ、女性は強気な笑みを返しながら、パチリとサクライにウインクしてみせた。
「――姫っ姫ぇっ! 急に走らないで下さいッス」
と、そこに先刻女性に付き添いこの式典に推参していた眼鏡の青年が小走りにこちらへやってくるのが見え、マーヤはやはり顔を綻ばせて手を振ってみせる。
対称的に小柄な女性はむすっと頬を膨らませながら、鬱陶しそうに舌打ちをしていたが。
「うっさいわねチョク、散々待たされたんだからこれくらいいいでしょ?」
「気持ちはわかりますが、一国の王女としてもう少し場をわきまえて下さいッス。まったくミドリ女王が見たらなんというか……」
『チョク』と呼ばれた青年はトホホと今にも泣きそうな顔で女性に諌言を呈す。
だが彼のお小言など、女性にとっては馬の耳に念仏のようだ。
「ハイハイわかったわよ。どうせ始末書書かされるのはアンタだしね。そりゃ嫌よねえ、出世の道に響くしさ?」
「わかってるなら、もう少し俺を気遣ってくださいよ」
「やーだ」
「トホホ……」
やっぱりほんっと変わってないな二人とも――
まるで漫才のような十年前と変わらないそのやりとりを眺めながら、マーヤは心底可笑しそうにクスクスと笑う。
そんな彼女に気付くと、眼鏡の青年は恥ずかしそうに顔を赤くしながら改まってお辞儀した。
マーヤも一歩青年に歩み寄り、ドレスの両裾を軽く持ち上げて挨拶する。
「あーその、お久しぶりッスマーヤ女王、リューイチロー王。いやはや姫がとんだご無礼を――」
「いつもの事でしょ、気にしないで? 貴方も元気そうで安心したわ」
「苦労が絶えないようだねチョク」
「ハハハ。いやまあ、もう慣れっこッスよ」
「そう言えば、宰相補佐になったんだっけ?」
「流石は女王、耳が早いっスね」
就任したのはつい先月のことなのに、他国の人事までしっかり目を配っているとは――
青年は嬉しそうに、そして照れくさそうに頭を掻きながら肯定するように頷いた。
「責任重大ですけど、でもやりがいのある仕事ッス」
「凄いなあ大出世じゃない。頑張ってね」
「ありがたきお言葉、ですが女王のご多忙さに比べれば、その足元にも及びません」
と、労いの言葉をかけたマーヤに対し、青年はすっと指でメガネを直すと、デレデレと口元を緩ませながら謙遜して答える。途端、小柄な女性が軽く飛び跳ねてぽかりと青年の頭を殴ったので、そこで会話は終了することとなったが。
「いったぁ……なにするんスか姫?」
「私を無視してデレデレしてんじゃないわよこのハゲッ!」
「なっ、ハゲてないっスよ! ちょっとオデコ広くなっただけでしょ!」
まだまだフサフサッスよっ!――と、慌てて髪を隠すように両手で覆いながら、今度は青年は口を尖らせる。
と――
「あ、いたいた、マーヤ女王」
「おーい、女王様ー」
そこに本日の主役である少年少女達が、イシダ宰相に案内されてどやどやとやってくるのがみえた。
カッシー達に気づくとマーヤはニコリと微笑んで彼等を出迎える。
「お疲れ様カッシー。名誉騎士就任おめでとう」
「ど、ども。でもさ、もう金輪際御免だっつの。一生分緊張した気がするよ……」
「そう? 意外としっかり受け答えできてたよ?」
もううんざり――と、口をへの字に曲げた少年を見て、日笠さんは首を振ってみせた。
「そうね、まあ観れるほどにはできてたわね」
「やったわね柏木君」
「そ、そっか? サンキューな」
と、なっちゃんや東山さんにも褒められ、カッシーはまんざらでもなさそうに、にやけ面を浮かべる。
単純だなあと、日笠さんは苦笑していた。
だが――
「へぇ……ほほぅ……アンタがねえ……」
「うお!?」
感嘆の声をあげつつずずいと近づいてくるや、自分を興味深げに眺めはじめた女性に気付き、カッシーは思わず仰け反りながらマーヤを向き直った。
「あーその…マーヤ、この人がさっき言ってた知り合いか?」
「うん、紹介するわねみんな。彼女はエリコ。ブラス=ウッド連合帝国の第一王女よ」
「第一王女?」
「えっと、それってつまり――」
「そっ、管国の次期女王様」
『ええっ!?』
ええと、この方さっきドアを蹴破ってなかったっけ? いやはやとんでもない王女様が現れた――
その通りと肯定したマーヤを見て、日笠さんはとても口には出せない感想を頭の中で浮かべ、ぱちくりと瞬きする。
「よろしく、エリコ=ヒラノ=トランペットよ」
と、少女のそんな胸中などわかるはずもないエリコは、ひらひらと手をはためかせながら、何とも軽い口調でカッシー達に自己紹介した。
「そして後ろの彼がブラス=ウッド連合帝国宰相補佐のチョク……じゃなかったナオト=ミヤノ君」
「チョクでいいっスよマーヤ女王。皆さんよろしくッス」
と、同じく眼鏡をかけた青年――チョクは、ぺこりとお辞儀する。
「二人共私の親友なの。といっても会ったのは本当に久々だけど」
「十年前の冒険の時、一緒に旅した仲間だろ?」
「……あれ? 話したことあったっけ?」
「いや、あー……この前謁見の間で少し話聞いてたから」
しまった、これって舞の絵本で読んだ話だったっけ?――不思議そうに首を傾げたマーヤを見て、カッシーは慌てて誤魔化した。
幸いにもマーヤは納得してくれたが、この少年がアドリブや嘘が苦手なことをよく知る日笠さんは一人ほっと胸を撫で下ろす。
それはさておき、これは間違いなさそうだ。
明るい茶色の髪に栗色のぱっちりした目をした、マーヤとは対極的な元気で活発な美貌を持つ小柄な女性。
そして頼まれたら断れない性格そうな見るからに温和で優しい雰囲気の丸眼鏡をかけた好青年。
この二人こそ舞が描いた絵本に出てきていた、マーヤと共に冒険の旅を繰り広げた『エリコ』と『チョク』という人物であろう。
二人を交互に眺め、カッシー達は心の中で確信する。
そんな彼等の神妙な眼差しに気づき、エリコはどしたの?――と言いたそうに首を傾げてみせた。
「コホン……ところでエリコ王女、事前の通達もなしで突然のご来訪。本日は一体どういったご用件でございますかな?」
と、そこでカッシー達共にこの場へやってきていたイシダ宰相が、やや皮肉を込めた問いかけをエリコに投げかける。
だがエリコはピクリと片眉を吊り上げ、呆れたような表情と共にイシダ宰相の顔を覗き込んでいた。
「ちょっとタイガぁ。何よその余所余所しい態度は?」
「……王女、今は
「うわっ! 何よスカしちゃってさ」
うえっ、と小さく舌を出しながらエリコは眉根を顰め、大げさに肩を竦める。
みるみるうちにイシダ宰相の顔に焦りの色が浮かび、彼は再度誤魔化すように大きな咳ばらいをしてエリコから視線を逸らした。
「あの、エリコ王女はイシダ宰相とお知り合いなんですか?」
どうにも初対面とは思えない会話のやり取りといい、そして態度といい、二人は知己の仲のように見える――
二人のやりとりを眺めていた日笠さんは、恐る恐るといった感じでエリコに尋ねた。
はたしてエリコは肯定するように頷いてみせる。
「知り合いも何もこーんなちっさい頃からよーく知ってるわ」
「そ、そうなんですか?」
「タイガ君を私に紹介してくれたのもエリコなの」
「……ああ!」
そういえば王様もそんなことを言っていた気がする。確か『トランペットの姫君から紹介を受けてマーヤが抜擢した』とかなんとか――
ヨーコの宿屋へやって来たサクライが話していた事を思い出し、日笠さんは納得したようにポンと手を打った。
はたしてエリコとマーヤの言う通りで、管国トランペット生まれのこの若き宰相は生家の手伝いをしていた幼少時から、目の前の『お騒がせ王女』とは面識のある間柄であった。
というのも、彼の父親が経営している酒場に、エリコはお忍びで毎夜の如くやってきてはどんちゃん騒ぎを繰り返していたからだ。
そういった縁もあって、マーヤが新たな人材を捜していると聞いた時、エリコは丁度助教授に昇格したばかりの若き秀才であるイシダ宰相を推挙していたのである。
だが当のイシダ宰相はというと、どうにもやり辛そうだ。
まるで公衆の面前で親戚の叔母に、若い頃の黒歴史をばらされた甥っ子のように、いつもの冷静な表情はどこへいったのか、珍しく苦虫を噛み潰したような表情で口をもごもごとさせていた。
「イシダ宰相申し訳ございません。突然の来訪のうえに、エリコ王女のご無礼……どうかご容赦いただきたく――」
と、そんな彼を見かねてチョクが慌てて間に入り、場を取りなすように頭を下げる。
エリコを庇うように謝罪したチョクの気遣いにほっとしながら、イシダ宰相は彼を向き直りやや表情を和らげた。
「ミヤノ宰相補佐、貴方の置かれている立場は重々承知しております。ですが、お目付け役として王女に同伴されるのであれば、こういったことはどうか事前にご連絡下さい。こちらにも準備があります故――」
「ごもっともッス。大変申し訳ないっス! 次からは必ず!」
「謝らなくていいわよチョク。うちら別に友達訪ねて来ただけじゃん」
だがそんな部下の懸命なフォローもなんのその――
ぺこぺこと水のみ鳥のように頭を下げ続けていたチョクの努力を水泡に帰すように、エリコはギロリとイシダ宰相を睨み付ける。
「ひ、姫! ちょっと黙っててくださいッス!」
「やーだ! ちょっとタイガさぁ、アンタ誰にもの言ってるワケ?」
と、悪びれる様子もなく、逆に食って掛かってきたエリコに、イシダ宰相はやれやれと小さな溜息をついた。
だがこれも公務――と、私情を務めてひた隠し、再びエリコをじっと見据える。
「エリコ王女、貴方もそろそろご自分の立場を弁えてはいかがですか?」
「……ああ? なんですって?」
「仮にも貴女は次期トランペット女王となられる身。そんな貴女がこのように自由奔放に行動されては、管国としても信用問題に繋がって――」
「――貧乏助教授が随分と偉くなったわねー、アンタが金なくて困ってた時、散々っぱら飯奢ってやったのは誰でしたっけー?」
「なっ!? それとこれとは関係ないでしょう」
「そうなのエリコ?」
「そっ、こいつ大学にいた頃、研究に全部お金つぎ込んじゃってさ。毎日パンの耳とかで飢えを凌いでたから――」
「そ、そう言ったプライベートな話を女王に話すのはやめていただきたい!」
と、若き清貧時代の苦労話を危うくマーヤの前で赤裸々にされそうになり、イシダ宰相は公務も忘れて大慌てでエリコを制止する。さしもの辣腕宰相も形無しのようだ。
「宰相、エリコには後で私から言っておくわ。この辺にしておきましょう」
その様子を愉快そうに眺めつつ、クスクスと笑っていたマーヤは、しかし
ややもってその場を取り繕うように若き宰相へフォローを入れる。
「しかし女王、このままでは示しが――」
「貴方もエリコがどういう性格かはよく知ってるでしょ?」
ああ見えて本人には悪気があるわけではないのだ。良くも悪くも彼女は思ったがままに行動しているだけ。
それが彼女の長所でもあり短所でもある。
それにイシダ宰相も彼女には恩がある。彼が公私混同をする人物でないことは女王として十分わかっているが、言い出しづらい部分もあるだろう。
後は私に任せて――と、マーヤは微笑みながら若き宰相にウインクを投げた。
イシダ宰相はしばしの間、口の中で低く唸りつつ思案を重ねていたが、やがて諦めたように溜息をつき目礼していた。
「仕方ありません、では裁可は女王にお任せ致します」
「ありがとうタイガ君」
「下の名前で呼ぶのはお辞めください」
「はいはい」
「寛大なお心遣い、感謝するっス! イシダ宰相」
「ちぇ、偉そうに……」
「姫っ!」
「はいはいわかったわよ」
そういいつつも見えないようそっぽを向きつつ、ぺろりと舌を出したエリコに気付き、イシダ宰相とチョクはやれやれと、ほぼ同時に肩を落とす。
「ところで手紙を読んで来てくれたって言ってたけれど――」
「そうだった! ねえ、アンタ達が噂の『チェロ村の小英雄』さんでしょ?」
閑話休題。
マーヤの言葉に本来の目的を思い出すと、エリコはにぱっと満面の笑みを顔に浮かべてカッシー達を振り返った。
またその噂か――少年少女は思わず引きながら半ば辟易した苦笑いを浮かべたのであった。
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