異界漂流記パラレルダイバー

月天下の旅人

第1話「運命の出会い」

浅倉 遥あさくら はるかは管制席で、操縦席に座る甘崎 円花あまざき まどかに声を掛ける。

「僕のオペレーションは不安があるかな?」

「いえ、大丈夫よ」

「それでも有人での異世界転移は初めての試みだ。下手したら事故が起きるかもしれない」

「そうなっても遥を恨んだりはしないわ。いつでもいけるわ」

「それは僕も一緒だ。例え何があったとしても君を責めたりはしない」

「遥、合図をお願い」

「分かったよ。パラレルダイバー発信準備開始!」

 パラレルダイバー。人型の外見に、異世界転移装置と武器を搭載した全高20m程の有人機。

 所謂人型ロボットであり、実際は兵器として役に立たないといわれる物である。

 しかしこれを開発する際、どんな地形でも対応でき武器の内蔵も容易な形態は人型であるという結論が出たのだ。

 ともかく円花は格闘ゲームのコントローラーのようなレバーとボタンの中から、一つのボタンを押す。

 そして更に、彼女は別のボタンも押す。

「異世界転移装置、起動!」

「転移装置、システムオールグリーン!転移開始!」

 遥がそういうや否や猫型ロボットがタイムマシン動かす時のような空間に入る。

「無人機による異世界転移で、既に目標となる異世界は粗方絞れている」

「とりあえず、手直な空間座標の世界から転移するよ」

 そんな遥に円花は答える。

「了解よ」

「目標空間座標の地点に向け、転移先を固定」

「ところで転移先座標ってこの空間で決めていいんだっけ?」

「どこが一番手直かは湾曲空間で目視するのが早いし、無人機の臨床結果からも問題ないと出てるよ」

「確かにその通りだけどさ、それってリスクが高かったような……」

 円花がそういうや否や、警報がなる。

「空間気流だって!?」

「ごめん、そういやこれってリスクが高かった!」

「まあいいわよ。そういうことは誰にでもあるし」

 そんな円花に遥は返す。

「でもこれは不味いよ。気流に乗って別の世界に行く?」

「いえ、気流に乗ったら元の世界へ戻ってしまうわ。それは即ち実験の失敗を意味する」

「そんなこといってる場合じゃないよ!」

 円花は遥にこう返す。

「ここは私を信じて。気流を横切りながら目標の世界へ向かうわ」

「……そうだね。さっきのは僕のミスだし、君に任せるよ」

 そして気流を横切りながら、パラレルダイバーは転移の最終段階へと移ろうとする。

 しかし空間気流に耐えきれず転移終了直前にパラレルダイバーは流されてしまう。

 直前であったため予定していた世界には何とか辿り着いたのだが、

機体は湾曲空間にもまれてしまうのだった。

「さて、今日は瓦礫の撤去だったな」

 人型作業機で瓦礫の撤去を行う男性、美空技 奏多みそらぎ かなた

 彼はこの世界のジョブテイカー制度を使い、催眠学習で得たスキルを基に瓦礫の撤去をスムーズに行っていた。

 そんな彼は、人型の機械……パラレルダイバーからが投げ出されるのを見つける。

 一方遥もまた、衝撃でハッチが開きのだと悟る。

 そのせいかやけに自分の身体が重く感じるものの、確認する暇はなかった。

 念のため小型のパラシュートもパラレルダイバーに搭載されてはいたのだが、

急に投げ出されてしまったらどうしようもない。

 だが遥は青年に受け止められる。

「大丈夫かい?」

「……君は日本語が喋れるんだね」

「ああ、大丈夫かいお嬢さん?」

 そんな青年に遥はこう聞き返す。

「どこの誰か知らないけど、僕がお嬢さんに見えるの?あ、僕は浅倉遥」

 そういいながら彼は漢字を砂地の地面に書く。

「俺は美空技奏多だが、君はどう見ても女性だよな?」

 そういわれて遥は下を向く、するとでかい胸に気が付く。

 Fカップくらいはあるだろう。

 下半身にも違和感を感じる。どうやら生殖器も女性のそれになっているようだ。

「えっ……!そういえば、円花は?」

「あっちに落ちた人型作業機、二人乗りなのか?」

「そうだけど……人型作業機なって無骨だね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る