ゆきうさぎ
@ami18910907
第1話 未来、夏
「立花君!!」
そう言って俺の周りをクルクルと笑顔で走り回る女性。腰まで伸びた艶やかな黒髪。そして、夏を匂わせる麦わら帽子に白いワンピース。今時こんな格好の人がいるのだろうかと疑問に思うのだがこれが彼女だ。改めて後ろ姿を見ると、とても幼く見えてしまうのは内緒にしておこう。
「立花君。綺麗だね、海」
後ろで手を組みながら、砂浜に立つ彼女。波の音、海に沈んでいく太陽。そして、彼女。全てが俺にとって大切な思い出と今なったのだ
「すごいね、立花君」
彼女の横に俺も移動し、夕日に照らされた顔を覗き込んだ。
「お気に召しましたか、白雪姫さん?」
(彼はいたずら顔で、それでもって笑顔で私に言った。私が次に言う言葉を分かっていながら)
「私は姫さんなんかじゃないよ」
あぁ、やっぱり。思ってた通りだ。ここに来るまで、一緒に過ごして来て何回も聞いた言葉だった。今、彼女は少し照れながらハニカミながら俺に言ってきた。綺麗で純粋な顔だった。
「いいや、あの時からお前は俺のお姫さんになった。違うか?白石雪音」
彼女、もとい白石雪音は頬を赤らめた。恥ずかしかったのだろうか、被っていた麦わら帽子で両手で持ち口元を隠した。その、仕草すら愛おしく思えた。自分で言うのもなんだが凄く溺れているのだ。
「…だったら立花君は王子さん?」
少し悩んで口を開いた彼女が言ったことに少し驚いた。
「王子さんって…。普通王子様だろ、名前みたいだぞ」
そう言われてはっ、と気づく彼女。それでも、首を傾げる。
「いや、でも立花君は王子様って感じじゃない。やっぱり王子さん」
俺が納得してないのを、気にせずに歩き出し波打ち際まで移動した。足くるぶしにかかる海の波感じ、引き返そうとしたのだろうか。俺の方を振り向いた。その、顔は夕日の逆光になり分かりずらい。だが笑顔だと。俺は感じた。それもとても大きな。そして、その笑顔のまま肩を揺らし叫んだ。
「立花空くんは、私の王子さん!」
ゆきうさぎ @ami18910907
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