Team 11~特殊部隊は陰を歩く~

@scar

第1発 チーム11

「・・我々は、今まで数々の戦闘を越えてきた。アメリカ国内で!中東で!アジア太平洋極東アフリカヨーロッパ!ときに敵国を突き崩し!ときに悪党共を一掃し! ときに仲間を救出し!我等は合衆国のつるぎと盾になってきた!」


 台上で茶髪で髭を生やした、50代程の白人が演説していた。

 今行われているのは、アメリカ海軍特殊部隊 ネイビーシールズ チーム11 試験小隊の着任式だ。

 と、言ってもなんと表せば良いか・・・華が全くない。

 会場は薄暗い地下。星条旗もB海軍戦士の歌もG錨をあげてMも流れず、観客は軍の上部と政治家お偉いさんしか来ていない。聞こえてくるのは小隊長のジェイコブ・ガルシア少尉の怒鳴り声演説だけだ。

 そもそも、ネイビーシールズには「チーム11」は存在していない・・・というか、存在しないことになっている。

 その「存在しない部隊」を「試験」小隊として使い、「極秘特殊部隊」の効果を試しているのだ。

 チーム1~10までの隊員、そのなかの上位30名。「超精鋭中の精鋭」といった奴等が、ここに集まっている。

 

 「我等はチーム11として、他のチームの手に負えない仕事、そして他のチームが出来ない仕事をこなす誉れある小隊である!しかし、名誉ある仕事であるからこそ、我等の存在は!!肝に命じておくように!」

・・・なるほど、ね。

「イアン・リチャードソン2等軍曹!!」

 僕が呼ばれた。

「貴官を、ネイビーシールズ チーム11 試験小隊Aアルファ分隊 分隊長に任命し、アマーリ・テイラー3等軍曹、同じくジェームズ・フィッシャー、ジェイソン・コックス伍長、同じくオリバー・ウッドを分隊員とする」

「「「「「はっ!」」」」」


「ホセ・チャンデス2等軍曹!!貴官をネイビーシールズ チーム11 試験小隊 Bブラボー分隊

分隊長 に…」


 こうして極秘の着任式は過ぎて行く・・・




―――――――――




「よう、イアン!」

 着任式が終わり、最初に声を掛けてきたのはチーム6古巣で同じ分隊で、これからは俺の分隊員となるジェームズ・フィッシャー。30代後半、ツルッパゲの大柄黒人だ。

「おおジェームズ、同じ分隊だな!」

「お前が分隊長だがな。出世したもんだな。まったく、なんで俺じゃないのか・・・!!そうだ、今からでも遅くない。顔に傷が付く前に、その全白人が理想にしているようなハンサムな顔でハリウッドにでもいってこいよ!そしたら俺が分隊長だ!!」

「ジェームズ、4月1日エイプリルフールに悪戯で分隊長の弾倉マガジンから弾を抜くような奴はまずなれないさ」

 こいつ、優秀なんだが、どうも問題を起こすせいで評価を下げている。


「ところでイアン、さっきの演説、少し引っ掛かったんだが、・・・『 他のチームの手に負えない仕事、そして、他のチームが出来ない仕事をこなす』。どうしてわざわざ2つ目を言ったんだ?」

「お前、演説を真面目に聞いてたのか!?やばい!明日は核の雨だ!!」

「いや、聞き流してたさ。でも、ここだけ妙に耳に残った」

 まあ、こいつが真面目に聞く訳がないわな。にしても・・・

「なかなか鋭いじゃないか、憶測だが、答えてやろう。まず聞くが、なぜこの小隊は極秘なんだ?」

「そりゃあ、シールズの内部だって秘密な訳だし、ここはその中の最強チームだ。『強い部隊は極秘』っていう方針なんじゃないか?」

「・・・お前、つくづく純粋だよな」

「んなっ!?うるせえ!」

「まあいい、『汚れ仕事をする』ってことだよ、この小隊は。他のチームには出来ないし、公表も出来ない。」

 正直、僕はこの事について、「正しい」とも「正しくない」とも思っていない。それを考えるのは、お偉いさんの仕事だ。標語にもある通り、「従う準備は出来ている。」

「・・・聞かなかったことにしよう」

「ああ、そうした方が良い。それか、国の為とでも思っておけ。僕ぁ何も考えないようにした。少尉は僕たちを『剣』と呼んだ。剣は持ち主に忠実だ。」


「・・・そうだ、少尉について、大きなことじゃないが1つ気付いたことがある。あいつぁ・・・」

 ジェイコブ・ガルシア少尉か。どこのチームに居たかも知らないが、経験上あいつは

「愛国者の皮を被った・・・戦闘狂ガンモンガーだろ?」

「・・・チッ 少しぐらい良い顔させろってんだ!」

「ははは、ごめんごめん、じゃあ説明はそちらで」

「はあ。まず、目だ。ああいう崇高な事を語るとき、愛国者ってのは目を輝かせる。オモチャを見つめるガキの目だ。」

「だが、少尉は獲物を見つめる狼の目だった。この先にどんな汚れ仕事が出来るのかを考えていた、と」

「そうだ。それだけじゃないぞ。『ときに敵国を突き崩し!ときに悪党共を一掃し! ときに仲間を救出し!』?順序が反対だろう。普通は、『直接的に人を助けた』記憶が先に出る。俺も含めてな。だが、奴は『殺した』思い出が先に出る」

「まあ、僕としては変に拗らせた愛国者よりかは、評価は高いけがね。弱い戦闘狂ガンモンガーは面倒だが、強いなら放っておけばいい。そろそろ戻るぞ、分隊の奴等と顔合わせだ。」

「どんな奴等だろうな?」

「普通がいいさ、普通が」

「こんなとこに普通な奴は来ねぇよ。賭けてもいいが、ゲイ野郎が1人はいる」

・・・1人で済むといいがな。


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