電柱考

 日本には電柱(電信柱)という独特な宗教設備がある。それは町全体至るところに立てられ、電線と呼ばれる線によって、電柱同士を結んでいる。電線は各家屋と繋がっている。このことは、共同体という概念を具体化しようという意思がはたらいた結果と捉えられそうだ。

 この電線は彼らにとって神聖であるため、神職を負うものだけが触れることを許されている。一般の者がこれに触れるとき、デンキと呼ばれる神によってその命を奪われると信じられている。そのため、万一、物が絡んだり、電線がちぎれても、彼らが直接電線に触れることを避ける。

 これら電柱、電線信仰の本源を辿ってみれば水や火といった自然への信仰と繋がっている。彼らは自然的な力によって自分達の共同体があるのだという意識をもっているようだ。

 この電柱による共同体観念の形成と関連するかと思われる呪物に、吊革が挙げられるが、これについては次回の考察にまわす。


(次回はない)

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