Narrold Man

参径

プロローグ

 白日――





 とある国、とある町。


 白い71年式のダッジが、覆面のパトカーに追われていた。ハンドルを握るのは、30代半ばごろと思しき小太りの男。ストライプの模様が入ったポロシャツは、じっとりと汗に濡れていた。

「クソッ、なんなんだよ、いったい!」

 男は舌打ちとともにハンドルを回した。バックミラーを覗く。青いランプを回し、サイレンを響かせて迫るフォード・フュージョンのパトカーに、男はただならぬ恐怖を覚えた。


 メーターの針が80近くを指す。時速80マイル、キロメートル法に直せば150キロ。道幅の狭い田舎町で、これ以上のスピードを出す気には到底なれない。


 ハンドルを握る両手が汗ばむ。額にも大粒の汗が浮かぶ。通り慣れたはずの道が、いやに狭く感じる。カーブに差し掛かりスピードを落とすが、後輪が路面にとられる。ダッジは無様に尻を振った。それでもパニック寸前で、何とかカウンターを当てた。

「ちくしょう・・・!」

 このままでは、重大な事故でも引き起こしかねない。



 気は進まないが、あそこに向かうしかなさそうだ。





 ―”偏屈”のダイナーに。

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