文学高校生とネットゲーム

Lubred

プロローグ

プロローグ


「危ない!」


 俺は即座に相手の攻撃を避け、スキルを打ち込む。ようやく苦しみながら倒れていく相手を見てほっとする。

「いやあ、危なかったね、クルア。」

「ったく、お前っていつも危ないよな。」

 だいたい予測つくだろ、と呆れ顔をゲーム内のキャラクターに反映させる。そうして彼女のキャラ、シューシャに向けてつぶやく。

「お前ってほんと、負けず嫌いだよな。」

「当然よ。」

 そんなやり取りをしていて、いつもながら思う。

「ほんと、VCって便利だよな。」

「ほんとね。」

 VCとは、ボイスチャットの略で、簡単に言うと、ネトゲあるあるの、文字を打ちまくってたら次々と話題が変わっていって、文字打ちに慣れていない人が会話できない。と言ったトラブルを無くすため、マイクを通して、肉声で会話出来るシステムのことだ。まあ、理由はそれだけじゃないんだが。

「やばい、シューシャ、後ろ!」

「うわああ」

 その悲鳴を最後にシューシャのヒットポイントが尽きた。全く。考え事をしている最中の背後からの攻撃、ズルすぎるなあ。こいつはまだ俺の指示なしじゃ動けないほどの初心者なんだから。

「って、俺もやべえええ。」

 言い終るや否や、すぐに俺のヒットポイントが狼らしきモブによって消される。背後の次は、ハイドかよ。と、俺はココロの中でツッコミを入れながらデスペナを受け、復活した。

 俺は普段から思うことがある。


――何で俺、ネトゲしてんの?


 中学生の頃、文学少年とまで呼ばれた程の俺がどうしてゲームをしてんだ……?

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