月がきれいだ――

「幸せ」を求めることが何度とあっても、


「幸せ」を感じることはそう何度とない。


ふとした瞬間に訪れる、それが本当の「幸せ」



今日、そう今日だけ


もう今日のような日は来ない


そう考えた瞬間、私はただ「幸せ」を求めた


君といられる時間という「幸せ」を私は自然と欲していた



明日、そう明日になれば


もう君に会えない


会話をすることも、笑顔を見ることも


それができたのはこの場所に繋がれていたから


自由になることを望んでいたはずなのに


君との居場所を失いたくないと望む



君といられる残り数十秒


心臓が早音を打ちながら手が震える


ああ、届かない、また、届かない


それでも今、君の隣にいられる


その瞬間、「幸せ」は訪れた


春が来る直前のやわらかく温かい風のように


ほんの少しの感じられる時間



ただ言えなかった言葉をここに―――


「月がきれいだ」


そう君に言われて


「死んでもいいわ」


と返してもいいくらいに、


私は君が―――――。

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