君を殺してしまえばよかった

‪あの頃のことを思い出そうとすると、

まるでそれは最初からなかったように、

音も景色も何も思い出せない。‬


‪忘れたかった。‬


‪忘れようとした。‬


‪それなのに、何もかも全てを忘れて、失ってしまった。‬


‪感謝を言うべき相手も、

大切にしていたものも、

自分の心も全て。‬


‪君のこと殺してしまえばよかった。‬


私を殺した君に、

なぜかそう思ったりはしなかった。


昔のことはわからない。


私は一度死んだのだ。


あの暗い日々の中で、

静かに、安らかに、眠るように。


ごめん。


誰に届くことのない言葉を遺して‪。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る