沈む星
@tanax
プロローグ
川瀬蒼の苦しそうな息づかいを耳元で感じながら、鳴海武史は蒼を背負って、闇の中を駆けていた。
背中全体が濡れているが、自分の汗か蒼の汗かも分からない。ただ、支えてる手を伝い、滴り落ちる、なま温かく滑りのある感触が、蒼の血液だということは分かった。
照明もない廃線になったトンネルの中だった。
くわえているペンライトに力が入り、ぎしぎしと耳障りな音を立てる。
武史は蒼の状態を見極めようとしていた。数分前より、蒼の呼吸が弱々しく感じられる。
もう限界か。
立ち止まり、しゃがんでから、ゆっくり蒼を壁に寄りかからせる。
「俺の声が分かるか、おい」
何度も声をかけるが、反応はない。
武史はツナギの胸ポケットから、小さな白い石の欠けらを取り出すと、蒼の口に無理矢理押し込んだ。
「飲め、飲み込んでくれ」
蒼の顔が歪む。大きく痙攣したかと思うと、蒼の全身から目が眩むような光が放たれた。
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