第10話
市内の総合病院のお話です。
40年位前までは、今よりずっと中心部に立地し、駅にも近かった病院ですが、その後郊外の川を渡ったエリアに移転し、前とは比べ物にならないほどの規模の総合病院として多くの患者さんを日々受け入れています。
かく言う私も、20代の時マイコプラズマ肺炎でここに緊急入院したことがあります。
さて、恐らくは以前の位置にあった頃に勤めていたんだと思いますが、一人の元看護婦さん
で退職後、私の自宅の隣にあった木造アパートの経営者と一緒に暮らしていた中年女性が
いました。
私の家から、さらに数軒ほど西にあった家のご主人が病気に罹り、自宅で介護を始める事になったのですが、そこの奥さんから聞いた話です。
この、元看護婦だった人が彼女の家にやって来て、「ご主人にこれを使ってもらおうと思って来た」とシーツを持参したんだそうです。見れば、その白いシーツにはくっきりとシミのような跡が付いていて、彼女が「これは?」と尋ねると、元看護婦は顔色も変えずに「ああ、これね、昔の患者さんに使ったやつよ」と言うので、気持ち悪く思いさらに問い詰めると、何とやはりそれは血液で、かつてすぐ道を渡った所にあった建物の中で、占い師の男性が殺害され、救急で病院搬送された時に使ったものだというのです。全く悪びれることも無く「私の担当だったので」と言ったといいます。刺殺された被害者の、しかも今もって犯人も分からないままの事件ですが、そういう物をずっと持っていたという事だけでも不気味だし、それを他人に使わせようとするという感覚も理解できないと、この家の奥さんも非常識というのとはまた別の気味悪さを感じて話をしていました。
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