10ポイントだけ?
転生したばかりの青年がレプリカワールドかプランティア、その何方(どちら)かを転生先に決めようとしていたが、転生ボーナスとして得られるべき幸福ポイントについての説明を求める。意外と慎重なのかも知れない。
「はい、幸福ポイントとはつまり……貴方が事故死していなかった場合に得られた幸福です。それを貴方の価値観に合わせて換算したポイントを付与する事になります。そのボーナスポイントを使い、堅実に基礎能力値を強化し、冒険を楽なものにしたり、強力な
* (説明の星)『ここで私が説明しよう』
神業とは所謂…必殺技の様なものだ。
各技を司る神々や、誓約を結ぶ女神の神通力を通してその力を行使する能力なのだ。その力は世界線を超え、貴方に干渉し、その力を発現させるぞ!
神具とは、神の加護を受けたアイテムだ。
各世界の物理法則の影響を受けない特別なもので、迷ったら大体チート級の便利アイテムで転生する事をオススメするぞ!
さ、閑話休題だ!
「……成程。説明ありがと、近くで輝いてる小さな星さん。そんで、俺の幸福ポイントは?」
良かった。彼も何だかやる気になってくれたみたいで嬉しい。
「そう慌てないで下さい。貴方はもう何にも追われる事の無い自由の身なのですから。今確認しますね?」
私は何も無い空間から幾何学的な錫杖を出現させ、それを大袈裟気味に掲げ、境界の女神特有の神業を行使する。
「宇宙に昏く輝く満天の禍星よ、死す定めに無いこの者の残火を我が前に照らし映せ!……Now Roading!」
転生ポイントは不慮の事故死が無かった場合、得るべき幸福を対価に授けられる。それもまた転生者自身の掛け替えの無い命の軌跡として。
その人の歩むはずだった人生を映像として映し、その中で彼が幸福を感じたであろう都度、そのポイントは加算されていく。
「……貴方がこの先、不慮の事故さえ無ければ歩めた人生、その幸福度は……あれ?」
目を輝かせる青年に私はノリと勢いで誤魔化す事にする。
「貴方に付与する幸福ポイントは……10ポイントです!やったね!」
「おぉっ!お……?」
「おっと、ポイントを付与する前に貴方の転生後の能力値を示しておくわね! 成長傾向は初期設定で数パターンに分類されているからステ振り時の参考に」
「いや、あの……10ポイントって多いの? それに歩むべき人生の映像ってやつ? 数秒で消えたんですけど? 俺、爆炎に包まれてなかった?」
「な、Now Roading……!!」
名前:漠 土
Lv:22
天 職:未設定
成長型:技巧
HP 150
MP 40
筋力 20
技量 40
体力 28
精神力 20
俊敏性 25
天運 5
記憶領域 3
「いやいや、ステータスの表示より、その後の人生について確認しませんか?」
「あぁ……えっと、それね? 実はね……あの高齢ドライバーさんが貴方に突っ込んで来なかったとしても、三日後、貴方の働いていた地雷工場に改造老人達が乗り込み、貴方は他の従業員を守る為、爆弾を抱えて自爆。因みに貴方が彼女に殺された所為で、二日後、会社は改造老人の襲撃により倒産、というか従業員は全員皆殺しに……」
「え? 轢かれ無くても三日後に死んでたの?」
「はい。しかも殉職なので、高齢者ドライバーによる死亡事故では無いので、次元境界線での救済措置も無く、天に召されてました」
「じゃあ……寧ろ婆に轢かれて感謝?」
「そういう事になりますね。二日分の人生を台無しにされた事にはなりますが、ブフッ」
あー!もうダメ!笑い堪えるの耐えられない!
「おい! 今笑ったな! いや、それより、さっきお前は……」
「お前ではありません。境界線の女神、ボルダナ・ミーエとお呼び下さい」
「ボルダナさん、さっき従業員が皆殺しって……」
「言いましたよ?」
「マジか……」
「死んだ貴方には関係の無い事です」
「くっそ、なんなんだよ……三日後の俺は柄にも無い事しやがって。しかも俺が居なきゃ従業員が改老達に皆殺し? 笑えない冗談だ」
「漠土さん、貴方は予てより待遇の良い他の正社員さん達を妬み、爆死しろ的な事を時折考えておられました。結果オーライでは?」
「実際に爆死するのは俺だったけどな。それより確か……転生先に現世を選べたよな?」
「はい。いくつかの制約はありますが」
「制約とは?」
「能力値や記憶は引き継がれますが、手続き上赤ちゃんからやり直しとなりますし、遺伝子の影響が強くなるので、今の容姿が引き継がれる可能性は低いですね。そういう神業はあるんですが……多分、夫婦仲は悪くなりそうです。あと大抵の場合、名前を勝手に決められます。他の転生先だと誰かに乗り移る事無くそのままその世界に一人増える感じです。今のまま」
「くそ! それじゃあ三日後に間に合わない。赤ちゃんからやり直し……産まれても無いんだよな?」
「はい! 受精卵の貴方に何か出来るとは思えませんし、魂は定着されているので、子宮の中から記憶引き継いでゲームスタートです。ちょっとグロいかも知れないので我慢して下さい」
「無理! なんで現世に戻るのはそんなに制約が付くんだよ……詰んでるじゃねぇか!」
「いえ、貴方は詰んで無いので問題無いですよね? 貴方は選ばれたんですよ? 数多を司る神々に」
「轢かれただけだから」
「一緒です。さぁ、選んで下さい! 転生先の世界を! あと後ろがつっかえてるんで!」
「待て……ちょっと考えさせてくれ」
「これでも忙しいんですけど! まぁ、そうですね。分かりました。それでは先にそちらの女神候補生から先に手続きを済ませますので退いてて下さい」
「め、女神候補生?」
「ハイ!貴方と同じ時間帯に高齢者による巻き込み事故によって亡くなられた方です」
青年がすぐ近くで横たわる若い女性の姿に気付くと驚いた様に退く。
「おわっ! こんな所に人が! しかも滅茶苦茶美少女。本物の美少女を前にすると、陳腐なラノベみたいな語彙しか出て来ないものなんだな。美少女だとしか言えない。可哀想にな……こんな若い子も俺と同じ被害に」
「さぁ!目覚めなさい! 女神候補生、軽井美那子(かるい みなこ)よ! 世界の盟約に従い、救済措置を施します! コンクリートの壁に幸薄な青年を巻き込みながら激突! その後、絶命してしまった貴女の憐れな魂に救いを!」
「って! 俺を轢き殺した婆じゃねえかっ!」
私は境界線の女神ボルダナ。
貴方の憐れな魂に救済があらん事を。
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