雨宿り
少し懐かしくなった私は、まず先に幼馴染の
数分後に彼がやって来て
「久しぶり」
なんて挨拶を交わした後も他愛もない会話をしていただけなのに、とても安心感を覚えた。
流石6月半ば。唐突に大雨が降ってきたのでその場所から少し歩いた大きな公園の屋根の下に移動して、会話を続けた。
地元の友人で1番仲の良い京介は、腐れ縁で実家が隣同士の幼馴染。
その京介が
「あいつ、まだ見つかんねえんだってな」
とふと言い出したのだった。
全てがフラッシュバックした瞬間、少し目眩がして京介の肩に凭れた。
「あぁ、ごめん。この事話せるの
と苦笑いを浮かべていた。
「ううん、久しぶりに思い出したせいでちょっと苦しくなっちゃって」
と私は返した。嘘でもないが本音でもない。
あいつ、まだ見つかってないんだ…と心の中で呟いた。
私は久しぶりにその事を思い出した訳ではない。寧ろ毎日の様に考えている事だった。
京介の口からその事が告げられること自体が苦しかった。
その“あいつ”は私と京介のもう1人の幼馴染である
小・中学生の頃は3人でよく遊んでいて、近所のおばちゃんに
『奈津ちゃんはいいわねえ…王子様が2人もいて』
なんてよく馬鹿にされたものだ。
なぜ今なのか。空が泣き出したタイミングで言うのだろうか。それは長年一緒にいても分かるはずのないことだった。
「ねえ、恵の家行ってみない?」
私は自分でもびっくりする提案をしていた。
案の定、と言っていいのだろうか。京介は驚いた顔をして
「いいけど、今大雨なの分かってる?」
と釘を刺されてしまった。
それに付け足し、
「俺ら傘持ってないしな」
ともう1つ釘を刺された。
「じゃあ晴れたら行こう?」
その提案には納得したらしく頷いてくれた。
京介は小中高とスポーツ…はあまりしていなくて、どちらかと言うと文系なタイプ。芸術的センスは人並み外れたものを持っていたので推薦でそっちの進路へ進んだらしい。
私はと言うと、舞台装置を作る職に就きたくてそういう関係の東京にある大学へ進んだ。何とか就職先というか行きたい所はもう定めている。そこに受からなかったら地元に就職のつもりでいた。
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