虹の光の中で

れなれな(水木レナ)

プロローグ

目覚めると 

 ショッピングモールの家電店。


 ゲームのPVをじっと見つめる御陵ごりょう じゅん。ため息をついている。


 ――今日が発売日だったのに。


 あきらめきれずに何回も見入っている。一時間、二時間……さすがに店員が気にし始める。


 一見して迷子のようだけど……。


「ボクお父さんかお母さんは?」


「しんだ!」


 店員は一瞬かたまり、


「店長~~! 迷子です!」


 声を張った。


『迷子のお知らせです……横浜市からお越しの七歳の御陵純くんが三階家電フロアでお待ちです』


 午後の総合商業ビルにふわふわと響く呼び出し音声にしたがい、ガヤガヤとした雰囲気に一呼吸入る。


「純!」


 父親が大股でやってきた。込み合う休日に堅苦しいスーツ。ネクタイもピンまでちゃんとつけている。


「すみません、息子がどうも」


 息を弾ませている。


「よやくしておいてっていったのに!」


 強く責めるも、その声は湿度を失っていた。


「すまんすまん。発売日を勘違いしてて、予約日を過ぎちゃったんだよ」


「じかんはたくさんあったのに!」


 金切り声だ。


「すまん、純。すまん」


 純、唇をかんでうつむいている。これ以上責めても、ゲームは手に入らない。純にもそれはわかった。


 ――そんなに楽しみにしていたんだな。がっかりさせて悪かった。父さんが馬鹿だったよ。


 父の気持ちをよそに純、肩をいからせてぷるぷると拳まで握っている。だっと駆け出し、フロアから去る。


「待ちなさい、純! どうも、お世話かけました」


 言いながら頭を下げて追いかける父。

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