第14話 仕事に楽しみを見つける

最近、どうも仕事が楽しくない。課長の数字の追求は相変わらず厳しい。

それが原因か?

「どうした? 元気ないな」

「仕事が面白くないんですよ」

「それは、仕事を “have to(〜ねばならない)”でやっているからや」 「“have to”で仕事をしている?」

「そう、“have to”で仕事をしてんねん。“have to”で仕事をしていると仕事 が面白くなくなるんや。好きこそ物の......」

「上手なれ」

「そう。分かってるやんけ。だから、“want to(〜したい)”で仕事をするん や」

「“want to”?」 「分かりやすく言うとやな、仕事に楽しみを見つけることやな。仕事はやら

んとあかんことが多いけど、その中に、もしくは仕事に付随していることに楽しみを見つけるんや」

「例えば?」

「例えば、今、メインで宣伝しているデータのひとつを説明するのが楽しいとか、この宣伝フレーズが楽しいとか、仕事に付随しているものとしては、あそこの病院の受付の女の子が可愛いとか、あそこの病院に行くと他社の美人MRに会えるとか」

「そんなことでいいんですか?」

「このデータを紹介したいとか、あの子に会いたいから病院を訪問する、とかは “want to”やろ」 「データを紹介したいは仕事と直接関係してますけど、女の子に会いたいか らってのはどうなんですかねえ」 「こういう小さな、もしくはしょうもないことから始めていくことが大事な んや。だって、病院に行かなくちゃ仕事にならへんやろう! 沈んだ気分で 行くより、よっぽどええと思うけどなあ」

太郎さんがウエットティッシュでテレビの画面を拭いている。

き れい 「ありがとうございます。綺麗にしてくれて」

「こうして綺麗にしておくと、まさみちゃんが出て来た時、綺麗に見えるやろう」

「そんな理由で綺麗にしてたんですか!」

「“have to”じゃなくて、“want to”でしてるから楽しい、楽しい」

から そう言いながら、今度はティッシュで乾拭きを始めた。

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