左手の真実

@minato_hotaru

第1話

本よりも先に顔が売れたけど

地下鉄に乗るのが好きだったから

幾度となく交わした握手の中で

僕の手首は折れてしまったよ


お見舞いの花が随分と増えた

詩人たちは毎日のように作品を書いて

僕は溺れた魚みたいに

口を開けるだけのロボットだ


ハンバーガーを自分で食べたい

溢れる想いを詩に残したい


潰れた右手を悔やんだとしても

使える左手を鍛えてゆこう


魂の声を聞く為には

文字を書く手続きが必要だった

ノートに向き合うペンの感触が

優しいキスをするような僕です

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