クラスの委員長が性格詐欺者なんだが

朔立

第1話 性格詐欺者

花火の音が俺の部屋まで聞えてくる、どおぉん、どおぉん。

どうやら今日はお祭りらしい。

パソコンでアニメ鑑賞に夢中になっていた俺だが、やはり少し外の様子が気になる、

椅子から重い腰を上げ、窓に向かい、カーテンを開けるとそこには……


「何も見えませんよ……と」


去年まではそこそこ眺めのいいベランダだったのだが、

向かい側に新築が建ってしまったために、

見えるのはお隣さんの家だけ、


結果はわかっていたのに好奇心に負け外を見てしまった事に反省しつつ

机に置いてあったスマホに電源を入れる

そのまま青い鳥のアイコンのアプリケーションを起動する、

どんな内容でタイムラインが埋め尽くされているのかはおおよそ予想できる。


『彼女と花火ナウ! 』  『祭りの屋台最高! 来年もまた来ようね』


主にリア充が写真付きで投稿している


「ほらな、予想的中」


なんなんだこのリア充という生き物は、ホントに俺と同じ人間なのか?

俺の生活とこいつらの生活といったら天と地の差がある。


いや、ドブと天使だな。


「おっと、今の俺にはこのアニメを消化する任務があるのだ、リア充どもの投稿を見ている場合ではない」


アニメを見を終えて、ベットに横になったのは午前3時だった。




チュンチュン

そんな鳥たちの鳴き声が、世界に月曜日という現実を

突きつけているようだった


「くそ……寝不足だ……」


朝5時に起床し学校に行くための準備を整える

朝ごはんを食べ、身だしなみ、髪型を整えて、

そして新作のラノベを少し読んで... ...


「よし、行ってきます」


こうして6時30に家を出る


俺が通う学校は家から遠い、めちゃくちゃ遠い。

このぐらいの時間に家を出なければ朝のホームルームに

間に合わないのだ、


「うお、久々の日光……体に染みるぜ」


基本土日は家から出ない引きこもりだからな

出かけるとしても、アニメイトか新作のラノベが発売されたときだけだがな


家から自転車で20分あたりで電車の駅に着き、待合室のベンチに腰を掛ける


「あ! 新崎君、おはよ! 」


透き通るような甘い声でありつつ、どこか落ち着いた心地のよい声が聞こえる


「委員長、おはよ」


「もう、できれば名前で呼んでほしいな」


俺に気安く声を掛けてくれたこの子は、俺のクラス1-1組の委員長である

学校に1人いるかいないかレベルの美人だ、目鼻立ちも整ってる、肌も色白で、もちろんニキビなんて一つもなくて、でも目立ち過ぎない性格でみんなからの評判も高い。


「ごめんね、高崎さん。 おはよ」


「おはよ!」


だがごめんな、俺は二次元にしか興味ないから

三次元なんてクソだから。


「あ! りな~! 」


「あ、ごめんね。友達来たから行くね」


「じゃあ、また学校でな」


そんなこんなで電車が到着し、

30分近く電車に揺られ、ようやく駅に着いたら

そこから徒歩10分の道のりで学校に着く。


「あ、新崎君おはよー!」


「新崎君おはよ!」


多数の女子に挨拶をされ


「おはよ!」


元気に明るく100点満点の笑顔で挨拶にこたえる、

あれ?なんで引きこもりのアニメオタクが

朝、駅のホームで委員長に挨拶されちゃったり、

学校の女子にたくさんの挨拶をもらって、

まるで人気者じゃないかって?


そうだよ。


学校にいるときはアニメオタクという人格を殺して、

そして、クラスの人気者を演じているのだ!!

そのために中学のやつらがいないこんなクソ遠い学校に通っているのだ、


俗にいう、高校デビューというやつだ。

結果成功し高校が始まって晴れてクラスの人気者というわけだ。


教室に入り、机に座る。

こんないつもどうりの日常を謳歌していた。


「なぁなぁ、新崎! 昨日の俺のツイート見た!? 」


短髪で、いかにもバリバリ運動部っぽい日焼けした男子。

サッカー部に入っている、そんでもってリア充で、クラスではなかなか親しい仲である、もちろん俺のアニメオタクの人格は知らない。


「おう、遠藤、おはよう! 悪い! 昨日は課題終わんなくてスマホ封じてたわ!」


「へぇ、新崎が珍しいな! 課題ぎりぎりにやるなんて」


嘘に決まってんだろ、課題なら金曜日のうちに終わっている、そうしないと貯まったアニメを消化できないからな。

それと、お前のツイートはちゃんと見ましたよ、

彼女と2ショットで祭りを満喫している様子の写真を。

羨ましいですはい、死んでください。


「昨日はな! 彼女と祭り行ったんだよ、楽しかったぜー」


「へぇ、そんなんだ。 よかったな」


「お前が断らなければお前と行ってたんだけどなー」


なぜか遠藤がしょんぼりしている


「はは、まぁ俺が断ったおかげで彼女とお祭りデート行けるようになったんだから、

 落ち込まなくてもいいだろ」


「いやまぁそうなんだけどさ、お前と半年の仲なのに一度も遊んでないからさ」


え? 逆に半年でそこまで思ってくれるの? リア充の仲間意識ってすごいですね。

俺には到底その考えには至りませんよ。




こうして、1時間目 2時間目 3時間目…………と時間は過ぎていく、

もちろん、真剣に授業を受ける……というわけでもなく、

もし自分が二次元の世界に行ったら何しよう……という妄想を延々と繰り返して時間が過ぎるの待っている、誰しも一度は経験あるのではないか?


6時間目の終わりを告げる鐘が鳴り、

「新崎君、またね~!」

「新崎君、また明日~」


「部活頑張ってね!」


「きゃーーー! 頑張ってねだってーー!」


「いいなーー! 私もいーわーれーたーいー」


部活に向かう女子達を笑顔で見送り、

俺は速攻で校門を出て、駅に向かう。


「今日は新作ラノベの発売日! 時間を無駄にしてはいけない!」


このあと、新作ラノベを賭けて委員長とあんなことになるなんて、

この時の俺は知る由もなかった。





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