僕らが愛すべきミライ

第二十話『すべてが解決した日』

「ボクは君を許しはしてないし、あの時のことも今でのことも覚えている。君は知らないだけだよ。いろいろとね。」


 もう言うことが無くなったのだろうか。

 美奈子はクスリと笑い、僕の後ろへと下がった。


「理奈は…なんか言うことあるか?」

「……別にないわよ。あの時のことは全部忘れたし、言いたいことは美奈子と晴馬が言ってくれたから私は言うことない。」

「そうか。それじゃ、別に言うことないけど、勝手に恨まれている僕から言わせてもらう。」


 ここで初めて、委員長は吹っ切れたように僕に言う。


「……フッ、別にいいわよ。あんたは正義。私は悪。それだけで十分じゃない。」

「………。興醒めだな。」

「え?」

「僕を正義に値するのは早すぎるし、僕たちはあんたのやったことは許すことはないと思う。だけどな、悪なんて誰も言ってないぞ。」

「どういうことよ?」

「んー、何と言ったらいいのかな。お前さ、計画がすべて成功した時、どう思った?嬉しかっただろう?それと同じだ。僕だって、許せないと思ったことだって何度もある。自分の活躍で変わってくれれば嬉しかったと思うし、勝てばよかった。と思う。ことだってある。そう考えることができるだけ、あんたはまだマシだ。世の中にはそれを拒絶し、向き合うことを覚えないで自分の殻に閉じこもっている奴が五万といるんだ。その分だけ、あんたは成長していると思ったほうがいい。何事もポジティブに考えてみたら世界は変わると思う。僕はそうやっているから嫌なこともいい方向へと変えていくことができると僕は思う。」

「……私でもできるかな?」

「もちろん。だってあんたは人間だろ?人間がほかの動物より最も優れていることは考える能力、思考を変える能力が高いことなのだ。それをしようとするかしようとしないかであんたの世界観は変わってくると思う。」

「すごい自信ね。そんな自信はどこから出てくるのかしら。」


 別に答えるつもりはなかった。

 でも、委員長の腐り切った態度に僕はどうしようもなかった。


「なに、別に難しく考える必要はないさ。誰かを守りたい。この人に好かれるにはどうしたらいいだろう。注目を浴びるならどうすればいいだろう。何でもいい。考えることが大切だ。今のあんたは考えないで本能のままに動いているいわば、ただの獣でしかない。委員長。あんたはまだチャンスがある。」


 僕は委員長と同じ目線にたち、静かに続きを言う。


「だから頼む…僕の大切な人たちをこれ以上傷つけないでくれ。」


 それは、本心だった。

 僕がこの瞬間まで、思ってきたが誰にも言うことがなかった言葉でもあった。


「……はぁ。もういい、もういいわよ。私の負け。あんたの勝ちよ。石倉くん。」

「ありがとう。委員長。」


 僕がお時期をしてお礼を言うと、委員長は…。

それはそれで置いといてといい、僕に近づく。

 距離にして約1m以内、ほとんど密着状態になる。


「石倉くんにだけ教える。なんでこんなことをしたのか。」


 委員長はそう切り出すと僕にボソボソと言葉をつづけた。

 そして、すべてを知った僕は…。


「うっそぉ…。」


 落胆の声を上げるしかなかった。


「本当よ。さてと、授業が始まるわ。こんな茶番は置いて、準備しましょう?」

「あ、ああ。」


 僕は少し強がって、返答をして授業の準備に移った。

 そして、授業中も僕は落ち着きのない態度をとっていた。


 ああ、クソ。なんでそういうことを平然と言えるかなぁ…。


『私、中学の時から君のことが好きだったのよ。』

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