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「…そうだな、分かった、その役目やらせてくれ」
「政府が条件を呑めば、ね」
青年がせっかく決意したのに、弄ぶかのように彼女は肩透かしのような事を言う。
「…持ち上げておいて落とすとは…」
「落としたつもりはないけど?」
恐ろしい…と呟いた男に彼女は睨みながら疑問系でそう告げて家の中に戻る。
「…まあ、なんだ…アレが彼女なりの激励なんだろう、お前の所為じゃないから気にするなって事だよ、うん」
男は励ますように言って青年の背中を叩くとどこかへ歩いて行った。
「…俺の所為じゃない、か…そうだな、今回の責任は治したあいつらに取らせるべきだ」
俯きながら男の言葉を口にした青年は吹っ切れたように顔を上げる。
「よし!今日の特訓だ!」
青年は気合いを入れるように叫ぶと伏せってる魔物に近づいた。
「…やれやれ、また魔物と闘うのか…」
家の裏側に座っていた男が青年の叫びを 聞いて呆れたように呟いて袋から本を取り出す。
そして剣と爪がぶつかり合う音をBGM代わりにして本を読み始める。
「ふふんふんふ~ん~♪」
「ふぅ…今日の夕飯はなんだ?」
夕方。
日が沈み始めた頃に青年がタオルで汗を拭きながら家の中に入って来た。
「ぎょ…ビムスルだよ」
「ビムスル?」
「細かく刻んだ肉と野菜を薄く伸ばした生地(きじ)に包んで焼くやつ」
料理名を言っても首を傾げる青年に彼女は細かく説明する。
「…ほう、初めて聞く料理だが…まあ君が作るんだから美味いんだろうな」
青年は笑いながら言うとまた外に出て行った。
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