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「手伝えばご飯ぐらいは食べさせてくれそうだからだ」


「…そういえばご飯目的だ、って言ってたね…」



青年の返答を聞いて彼女は思い出したように呟いて少し考え始める。



「でも却下、手伝いは必要じゃないから帰って」



そして彼女は青年を突っぱねるように冷たい目で告げた。



「な…!…なぜだ?」


「あんたがいると魔物達を刺激しそうで面倒事が起きそうな気がする」



驚いたような青年の問いに彼女は振り向かずに淡々と返す。



「…その点なら大丈夫だ、俺はもうこの前の俺とは違う」


「どうだかね」



決意を秘めたような青年の言葉にも彼女は信用してないように肩をすくめる。



「少なくともこの森の魔物に喧嘩腰にはならないし、他の魔物に関してもなるべく戦いを避ける方向でいくつもりだ」


「…それが本当なら良いんだけど…」



人ってそう簡単には変わらないんだよ…と彼女が呟くと目の前を鹿のような動物が横切り走り去って行った。



「ヒルドか!?」


「静かに」



彼女は鹿のような動物を追いかけようとした青年の襟首を掴み口の前で人差し指を立てる。



「騒ぐと逃げられる、邪魔するんなら帰れ」



音を立てないように鹿のような動物を追いながら彼女はシッシ…と青年に向かって手を振った。

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