17

「…意外と本格的な畑だな…」


「収穫したばっかだけどね」



ホースで水をかけている彼女の隣で見ていた青年が意外そうに零す。



「こんな所だと魔物や動物による作物被害が心配じゃないか?」


「周りの柵には動物、魔物除けの呪符を張ってあるから…心配なのは鳥だけだよ」



辺りをキョロキョロ見渡しながら青年が疑問を聞くと彼女が空を見上げて答える。



「なぜこんな所に畑を?」


「意外と土の質が立派だったから」



近くに湧き水の川もあるから水もひけるし…と言いながら彼女は畑全体に水を撒く。



「なるほど…結構な広さだが、ココでは何を育ててるんだ?」


「野菜、穀物、果実類」


「…良く見たら木の板が突き刺さって文字が書いてあるな…キュウリ?」



彼女の説明らしき言葉を聞いて青年は畑を見て回り木の板に書かれている文字を見て首を傾げた。



「キュウリ…?これはキャベツ…これはピーマン…初めて見る名だが一体どういう野菜なんだ…?」



青年は不思議そうに首を傾げながら木の板に書かれている名前を順番に見ていく。



「おお!シュトリか!これは知ってるぞ!デイミル、モランダ、アーヘイム…これらは有名だな」



木の板に書かれてる名前に知ってる名称があったのか、青年は子供のようにはしゃいでいる。



「…それにしても色々な種類を育てているんだな…まるで農家だ」


「…本業の農家みたいに上質な物は育てられないけどな」



水まきを終えた彼女はホースを片づけながら青年の呟きに返した。



「!?次はどこへ行くんだ?」



来た方向とは違う方向に歩いて行く彼女に青年は慌(あわ)てて追いかける。



「洞窟」



彼女は追いかけて来た青年を嫌そうに見て短く返した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る