祝福の導火線


 二人の幸せな気分を運んで電車が駅に近づいていく。


『次は終点⚫️⚪️駅ー⚫️⚪️駅ー』

「あ……」


突然、透が言った。


「忘れ物?」

「あーまぁ、忘れ物と言えば、忘れ物……かな」


少し煮え切らない様子で透が言う。


「俺さ、カッコ悪いけど、美帆に告白するの凄い勇気がいってさ……いろいろな人に協力してもらっててさ」

「うん……」


それは知っている。

例えば間が悪かったけど、メガ姉がその1人だ。


「それで?」

「えっと……ごめん!」

「え?」


突然、透が手を挙げ合図をする。


「え!?えぇ!?」


『せーの!!』


今まで二人きりだと思っていた車内から、沢山の人の声がした。


「え!?えぇ!なんで!?」


驚く私を囲う様に集まってきたのは『相思相愛万歳』と書かれた看板を持ったクラスメイト達だった。その中には当然、メガ姉の姿もある。


「やれば出来るじゃない?」

「あ、あり……がと……で、でもこの騒ぎは何!?」


後で聞けば、つまりはそう言うことだ。


私達の事情を知るメガ姉が今回の企画を企てたらしい。

よくよく考えてみればおかしい話しだ。

一つ電車を遅らせたのが透だけなんて、他に誰も乗り込まないなんていくら田舎でもあり得ることでは無い。


「えーまもなく終着〜終着で御座います。お二人様どうぞお幸せに」

「駅員さんも!?」


驚く私の肩にぽんと手を置きながら、メガ姉が笑う。


「駅の封鎖部隊もいるわよ」

「なにそれ?なにそれ!?えぇ!?」


それはもう、恋の協力者なんて規模じゃなかった。そう、まるで町ぐるみに近い。


似合うと言われた髪型を続けるのが恥ずかしいとか、照れくさいとか、そんな次元をいっきに飛び越えて、その日、私と透は誰もが知る恋人同士になった。

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