喰わせろっ !
山本 ヨウジ
第1話 序章
二一××年。医学の驚異的な進歩により人類の寿命は
「不治の病」や「
死は決して恐怖の対象ではなくなった。
しかし、そのことは同時に、人類の未来を左右しかねない、ある副産物を生みだす原因ともなった。
それは『全ての学者が予測したより
自分達こそ世界の良識であると
当然、死なない老人達がひしめき合う超高齢化社会が誕生した。そして、そのことは深刻な事態を招く序章となった。
人口過密によるストレスと、食料不足による空腹に加え、ああ言えばこう言う『老人の我がまま』が世界の隅々まで
世界中の誰もが、明るい未来を語れなくなった。
中でも、人口増加において最も深刻な危機に陥ったのは食糧だった。
百五十億人の生活を支える基盤は、CO2の排出量を驚異的に増やし、地球環境を激変させてしまった。
穀物は不作が続き、家畜たちの繁殖力は激減し、海水塩分濃度の変化が、海から魚影を消した。
そんな、
海に囲まれた国は、海に生きる残り少ない生命を食い尽くした。
深海魚も、サメもクジラもイルカも全て食い尽くした。青い海は死んでしまった。
田畑に囲まれた農業の国は、残り少ない
草原に囲まれた放牧の国は、残り少ない家畜を喰い尽くした。人類の友であり、生活の糧であった隣人と呼べる動物達は姿を消した。
聞こえてくる鳴き声は――人間のみになった。
サバンナに囲まれた野生の国は、かつては自分たちのエゴにより絶滅に追い込んだ事を反省し、必死で護ってきた
ライオンもゾウもキリンもワニも姿を消した。野生動物のドキュメントを撮る事は不可能になった。
もはや地球上に生けるものは――人類と昆虫、そして微生物だけとなってしまった。
世界中に「あきらめ」が
人類は、
それでも、一部の国は――生き延びようと必死でもがいていた。
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