目が覚めたら何故か泥の魔女のシモベになってたんだが
魚を1匹見つけたら100匹いると思え
序章 泥の魔女デトラとの出会い
少女の名は泥の魔女デトラ 前編
真っ暗、真っ暗、真っ暗―――どこにいるかもわからないし、何も考えることができない。意識はまるで海の中で流される死体のようにフワフワしていた。
誰もいないこのわけのわからない、もうこのまま意識さえも無くなってしまうのだろうか・・・?
その時だった。
「・i、ok・」
―――何だろうか何か聞こえる
「・・、おき・!」
―――これが天使の声だろうか、少女のこえがしたけどそれにしてはなんだか優しくないような
「おい!起きろ!!」
―――いや、どちらかというと悪魔のような
「起きろと言ってるだろうが!!!!!」
その直後、俺の頭に割れそうなほどの激痛が走る。俺は思わず声を荒げた。
「いったああああああああああああああ!!!!!」
俺は体を起して頭を両手でおさえ、そのまま体を丸めこむ。
とても強い力で殴られたせいかまだズキズキする・・・。
「ニヒヒヒ・・・痛覚良好!やった!」
「おい誰だお前!俺の頭を殴ったや―――」
―――あれ?
自分の行動を思い返す。俺は頭を殴られて体を起して頭を両手で・・・おさえたのか?
はっと何かに気づき、自分の体を見た。すると体には見たこともない変な物が着せられていた。
「な―――なんじゃこりゃ!?」
俺は体の色々な部分を触りまくる。現在の自分の状況を確認しようとするがわけがわからなすぎて脳が混乱していた。
足はダブダブのズボン、両手の手から肘まではゲームでしか見たことがない鉄でできているような鎧のような物を装備、腰には何かを入れるためであろうポーチ、胴体もよくわからないダブダブの服、そして頭には・・・
「硬い・・・なんだこれ・・・」
口がない、耳がない、鼻もない。触ってみた感想は鉄のような質感だということ。叩いてみた感想はカンカンと音がするということだ。
―――いや、変なのはそれだけじゃない
俺は自分がどこにいるのか確認するために周りを見渡す。が、全く見覚えのない場所だ。
俺は今大きめの机の上に寝転がっていたようだ。ここはどこかの部屋の中のようだが、その壁のほとんどに本棚があり、大量の本が詰め込まれている。が、本棚にもはいりきらない本も沢山あるようで、いたるところに積み上げられている。
小さな窓があるにもかかわらずカーテンで閉め切られていて外の景色を見ることもできないし、そのせいで外からの明かりも入ってはこない。部屋の明かりは積み上げられた本と同じようにいたるところに置かれてある蝋燭からのものだった。
「本当に・・・なんなんだこれはどうなってんだ!?」
「すばらしい・・・すばらしいぞこれは!!」
俺がいる場所から右側から少女の声が聞こえる、しかしその話し方は少女らしくなかった。
「おい!ここは一体どこなんだ!?」
「ニヒヒヒ・・・やはりワタシは天才!これが泥の魔女としての大きな第一歩となろう!!」
「おいそこの小娘!質問に答え―――」
俺は右側に頭を向けた・・・が、俺は体が固まって動けなくなってしまった。
そこに立っていたのは身長1,4mほどの少女ほどの少女が立っていたのだが、固まった理由はそれだけではない。あきらかに俺の知っている時代のような服や見た目ではなかったからだ。
肌は褐色で髪が白銀のように白く髪型はショートボブ・・・と言っていいのか分からないがそれに近い髪型だろう(適当)。目の色も透き通った青色であり、顔も美少女と言えるほどだ、が、これが問題ではない。問題はここからだ。
その少女は大きくて黒い・・・ゲームやアニメで出てくる俗に言う魔女がかぶる帽子のようなもをかぶっており、その大きさは少女が手をまっすぐのばしたぐらいと同じ大きさほどだろう。胸には黒い布のような物を巻きつけており、下半身にはよくわからない構造のスパッツのような物を履いている。
一番気になったのは右腕の肌の色が違うこと、褐色肌なのに対して右の指先から肘までが白銀のように白く輝いている色をしていて、その右手の手の甲には黄土色で何かのマーク?のような物が描かれていた。
「―――――」
「おい!」
「えっ、何?」
「何だとはなんだ?質問があるんだろ?」
「あ、ああ―――」
正直見とれてはいたが上から目線の態度で目が覚める。なんだか勿体ない奴だ。
いや、そんなことを考えている暇はない。そんなことよりも聞きたい事がある。
「ここは何処なんだ?この俺がきている服や鎧はなんなんだ?そしてお前は誰だ?」
「ふむ、いいだろう。質問に答えよう」
少女は俺の質問の間に対してアッサリ返事をすると指を三本立てる。
「まず一つ目、ここの地名はデネブエラの森。そしてこの家は私の家だ」
指を一本下げる。
「二つ目、それはお前の新しい体だ」
また指を一本下げる
「三つ目・・・そうだな。自己紹介がまだだった」
そういうと少女はニヤリと笑い口を開く。俺は緊張して唾を飲み込んだ。
「私はこの世界で一番の魔女になる偉大なる泥の魔女・・・デトラ様だ!!!!!」
「誰だよ」
質問を返してもらったのに何一つ分からなかった。
目の前の自称魔女は意味不明なことを話していた。というか魔女ってなんだ?質問に全部答えてもらったのにわけがわからん。
「まずデネブエラの森ってなんなんだ?」
「なんだよって、この家がある場所の地名だ」
「いや違うそうじゃない」
「?、じゃあ何が違うんだ?」
「―――俺はベットの上で寝ていたはずだ、なのに気がついたらこんな所にいたんだぞ!?」
間違いない、このいにも日本ではあまりないだろう見たことがない周囲。つまり夢の中だ。
「地名を教えてほしいんじゃない、なんというか・・・もっとこう」
「―――ああ、理解したぞ。見たことも聞いたこともないのは当たり前かもしれないな」
自称魔女はそう言ってニヤリと笑った。その嫌な予感のする笑いはやめてほしい。
「えっ、というか今ので理解できたのか?」
「ああ、お前は別のセカイで死んだんだろう―――そしてその魂がその泥人形の中に入ったんだろうな」
―――は?お?
「お前何言ってん」
そんな阿呆みたいなことは無いだろう。けど―――あれ、俺が死んでる・・・?
その時俺は夢の中で不思議な夢を見たこと思いだしていた。
暗くなり人があまり出歩いていない住宅街の夜道を一人で歩いていた時のことだった。なぜだかその日は眠れなく夜中の12時ほどに目が覚めてしまい、少し体を疲れさせれば寝れるかなーと外に出たのだ。
だがそんな夜道を歩いていたら突然背中に激痛が走り、そのままコンクリートの地面に向かって手と膝をついて自分の腹を確認すると生温かいベタベタした液体と鉄の臭いが周囲一帯に広がった。その原因は俺の腹から染み出た血だったのだ。
俺は激痛で意識が遠のきそうになる中せめて俺を刺した奴だけでも顔を確認して呪ってやるとその場で立ち上がり、俺を背中から刺した奴に向かって襲いかかった。
そこには月明かりに照らされて光る白い肌の上から白い服を着た少女がいた。雲がなかったおかげでそいつの姿はハッキリ見えた。けど顔は鼻から上にローブをかぶっていたせいで確認できず、立ちあがった際の激痛で俺はそのまま地面に寝転がった
意識が遠のき周囲が真っ暗になっていく中、頭の中に少女の声が響いたような気がした。
『ずっと待ってるから―――ワタシを殺しにきてね』
「―――――」
「ワタシはお前がいたセカイで死んだことによりそのセカイとの関係が断たれた魂をこの泥人形に入れた。死んだ魂以外はその体に入ることはできまい」
―――じゃああれは夢ではなく現実だったのか?
「試しにオマエ自身の名前を言ってみろ」
「なっ・・・」
「ほら、言ってみろよ」
「おいバカにしているのか?自分の名前くらいわかるに―――」
次の瞬間、俺の体も思考も止まってしまっていた。
何故なら頭の中に自分の名前が浮かんでこないからだ。
「!?」
「キヒヒヒ!ほーら見てみろよ」
過去の記憶を思い返す、テストの名前の記入欄や家族や友人との会話の中で俺は何度も聞いていた。なのにまるでモザイクがかかっているかのようにわからない。
誰かに邪魔されているかのようだった。
いくら思い出そうとしても、いくら記憶をさかのぼってみても、自分の名前が思い出せない。
俺の名前は―――何だったんだ?
「どうだ?元いた世界から関係が断たれたせいで名前が思い出せないだろ?」
―――じゃあ本当に俺は死んで、別の世界に魂が来てしまったのか?
「おいおいまさか・・・自分が死んでないとでも思いこんでいるんじゃないだろうな?」
―――いや・・・違うこれは
「そうこれは―――」
「ん?」
その時の俺は現実から逃げる言い訳を考えることに必死だった。
「これ自体が夢なんだあああああああああああああああああああ!!!!!!」
そう言うと俺は素早い動きで机から降り、すぐさま自称魔女に右手で壁にある本棚に押し飛ばそうとした。
「なッ!?」
俺の体は大きいのだろうか、それとも自称魔女が小柄だからだろうか。
右手に当たった自称魔女はいともたやすく本棚にむかってはじき飛ばされる。
「グギギ・・・おいオマエ!わざわざ助けてやった命の恩人になにやって―――」
その直後、自称魔女がぶつかった本棚が揺れる。そしてそこにあった大量の本が重力によって降り注いだ。
「おいちょっとまっ、ぐあああああああ!!」
悪人のような断末魔とともに大量の本の下敷きになった。
自称魔女を見つめるの体は動いていない、おそらくのびているのだろう。つまり・・・
「よし、今がここから逃げ出せる絶好のチャンスだ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます