第251話 割り振り

「だったら、俺たちは街を守るぜい! なぁシンシ、ヤカタ!」

「ああ、そうだな」


 隣りに座る木山さんに肩を叩かれたヤカタさんが、力強く頷く。

 そして「お嬢、アストラル……」と意を決したように、真剣な顔を僕らに晒した。


「あんなことをやった後だ。信用しきれないかもしれないが、今度こそ守らせてくれ。俺……そして、シンシのためにも」


 言い切るやいなや、机に叩きつけるように頭を下げる。

 むしろ叩きつけたよね?

 すごい痛そうな音がしたけど。


「あ、あのヤカタさん?」

「姫!」

「は、はい!?」


 一向に顔をあげないヤカタさんが心配になった僕が彼に声をかけると、隣で目を閉じていたシンシさんの目が開き、突然僕へと顔を向けた。

 び、びっくりしたー……。


「ヤカタの言う通りです。私たちの罪を考えれば、このような場に参加させていただいていること自体が温情だと分かっています。その上、このような我儘をお願いすることは許されないこと。それは分かっています。ですが今一度、この身に挽回のチャンスをお与えください! 今度こそ、必ず……守ってみせます」

「え、えーっと……アルさん。どうしましょう?」


 ヤカタさんと同じく、シンシさんも机へと頭を叩きつける。

 その現状に思考が追いつかない僕がアルさんへと助けを求めると、彼は少し笑いながら「アキさんの好きにしたら良い」と、言い放った。


 好きにしろって言われても……。

 そんなことを思いながら、僕はひとまず「とりあえず顔をあげてください!」と2人にお願いすることにした。


「僕は2人のこと嫌ったりなんかしてませんし、むしろ逆に凄いと尊敬しています。たしかにやったことは消えないですし、それで傷ついた人達もいると思いますけど……。でも、今はみんなと一緒にここを守ろうと考えてくれている。なら、全然問題なんてないんですよ。一緒に頑張りましょう」

「姫、ありがとう……ございますっ」


 これでいいんですよね? と、目線だけでアルさんにコンタクトをとれば、アルさんは小さく頷いた。

 そして、アルさんだけでなく、もう1人――オリオンさんが視界の端で、同じように頷いていた。


「でしたら私も残りましょう。それならば何かあっても、ある程度の対応は可能かと思いますので」

「あ、わ、私も残ります!」


 まるで自分のすべきことがわかっていたかのように、オリオンさんが口火を切り、それに乗る形でレニーさんも意見を発する。

 まぁ、残るって言ってるのみんな生産メインの人達だし、ちょうどいいかな?


「そうだな……生産プレイヤーと初心者達を残すのが得策か。そうなると、生産側の代表達が残る方が都合が良いな」

「あ、だったら僕も――」


 流れで手を挙げた僕に対して、僕とラミナさん、トーマ君やウォンさんを除くほとんどが声を荒げ――「アキさんはドライアドの所へ行ってください!」と、言い方は違えど大体同じことを言ってきた。


「ええぇぇ……?」

「まぁ、そういうこった。諦めてお前は精霊のところに行きな」

「ウォンさんまで。なんで僕が」

「もちろんお前だけで行かすつもりはない。なぁ、トーマ?」

「ああ、俺もいくで? アルも来るんやろ?」


 ウォンさんの言葉に返しつつ、トーマ君はさらにアルさんへと問う。

 それに対しアルさんは「ああ、もちろんだ」と、強く頷いた。


「旦那がそっちに行くんなら、俺が大樹を引き受けますぜぇ! どどんと、任せてくれい!」

「魔法系のプレイヤーも大樹の相手に回ります。的が大きいのは良いことですから」


 次々に表明が上がり、どんどん役割が決まっていく。

 僕の場合は決められてしまったとも言えるんだけど……。


「ウォン、お前はとうすんのや? 俺らについてくるわけやないんやろ?」

「俺はフェンらと共に周囲を回る。全員が全員、大人しくお前達の指示に従うとも思えないからな」

「ああ、そんならお前らが適任やな。頼むわ」


 ラミナさんのように勝手に参加したわけじゃない参加者は、ウォンさんの割り振りを最後に全員の割り振りが決まった。

 まとめると、僕と一緒にドライアドのところに行くのが、アルさんとトーマ君。

 大樹の相手をして足止めさせるのが、テツさんとカナエさん。

 拠点に残るのが、オリオンさんとレニーさん、木山さん……そして、シンシさんとヤカタさんだ。

 ウォンさんは自由にって感じ。


「となると、自ずと他のプレイヤー達の割り振りも決まってくるな」

「せやな。大規模やし、ざっくり分けるしかないやろ」

「となると、さっきアルさんが言ってたけど生産メインのプレイヤーと初心者さんは拠点で、他の戦闘メインのプレイヤーは大樹って感じかな?」

「ああ、そうなってくるだろう。この内容で、何か意見がある者はいるか? 遠慮はしないよう、頼む」


 アルさんはそう言って、ぐるっと顔を回すように全員を見渡す。

 こういうときの意見って、結構言いにくいイメージがあったんだけど……僕の視界には複数の挙手が見えた。

 えーっと、ヤカタさんに、カナエさん……あ、ラミナさんも?

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