第5話中編 もう一度
『ではそのままゲームを続けられる、ということでよろしいでしょうか?』
ウィンドウの向こうから、アインスさんの声が聞こえた。
「はい、それで大丈夫です」
その声に頷きながら、僕はしっかりと言葉を返す。
昨日は眠ってしまっていたけれど……、起きてから考えたら、僕の答えは酷くシンプルだった。
シルフにまた会いたい。
シルフと友達になって、あの世界を一緒に生きたい。
ただ、それだけしか出てこなかった。
『かしこまりました。……アキ様、ありがとうございます』
「え?」
『あの子を……シルフを大事に考えてくださり、本当にありがとうございます』
「そんな! 友達ですから、当然ですよ」
『ふふ、そう言っていただけると、私共も嬉しい限りです。アキ様、もし続ける上で、現実の方でも何か不具合が起きた場合は、私……アインスか、GMのツェンにすぐにお知らせ下さい。できる限りのサポートをさせていただきます』
「え? サポートは受けれないんじゃ……?」
『えぇ、弊社のサポートは受けれません。ですからこれは……、私たちの個人的なサポートのお約束です』
「アインスさん……。ありがとうございます!」
まさかの言葉に、胸がぐっと熱くなる。
だから、見えないとわかっていても、深く頭を下げた。
『では、アキ様のこれからの<
「はい、行ってきます!」
明るい声で送り出してくれたアインスさんに返しつつ、少し笑う。
数秒たって消えたウィンドウに、小さくお礼を返して、僕は<Life Game>へとログインした。
ログインしてすぐに、僕はとある場所に向かって走りだす。
いるかどうかはわからない。
けど、彼女なら……、シルフなら、あそこにいるんじゃないかって、そんな気がしたんだ。
「けど……、いきなり……全力で走るのは……、間違えた……かな……っ」
壁に手をついて、ぜぇはぁと息を吐く。
そのたびに顔の横に流れてくる薄紅の髪を後ろに流し、息を整えてまた少し歩く。
正直、さっきまでの僕は、今の見た目でやっちゃいけない顔と動きだった気がするけど……。
まぁ、そこは過ぎたことだし、気にしないようにしよう、うん。
そんな風に考えながら歩いていれば、ようやく目的の場所に出れた。
頭上から光の差し込む、少し開けた路地の広場だ。
「……シルフ! いたら返事して!」
大きく息を吸って叫ぶように彼女を呼ぶ。
周りを建物に囲まれた路地だからだろうか、僕の声が反響して……、思ったよりも可愛らしい声に少し恥ずかしさが増してくる。
いや、今は忘れよう、うん。
「またシルフと……、ちゃんとした友達になりたいんだ……。だから……」
俯いたまま呟いた僕の髪が、ふわりと、顔の横から後ろへと動かされるように流れていく。
それと同時に、右手を中心に温かい風が舞ったように感じた。
「……シル、フ……?」
見えないけれど、確かに彼女の気配を感じる。
感じ取りにくいのは、きっと……スキルを2つ、習得しているからだろう。
滲みそうになる視界を拭い取り、しっかりと彼女の気配を視る。
「聞こえるなら聞いてほしい。シルフ、僕は――僕は君と、また友達になりたいんだ」
そう虚空へと宣言しながら、僕は右手を前に差し出す。
「だからお願い。僕と……、契約してほしい」
僕がその言葉を口にした瞬間、身体が吹き飛ぶほどの激しい風が吹き荒れ、僕は思わず目を閉じる。
そして、その風が止むと同時に、僕の身体に軽い衝撃が走った。
おそるおそる目を開けば、目の前に緑色の髪。
薄緑色した半透明の女の子が、僕の右手を胸に抱いていた。
「……アキ様」
「ん、なに?」
「今度は、お試し……じゃないですよね?」
「お試しって……。大丈夫、ちゃんと明日も明後日も、一緒だよ」
「そう、ですか……」
シルフの言葉に、少し苦笑いをしながら言葉を返す。
その言葉が嬉しかったのか、自分の言葉が恥ずかしかったのか……、シルフが少し赤くした顔を隠すように俯いてしまう。
そんなシルフに少し笑いながら、僕は息を吸って、口を開いた。
「だから、シルフ。ちゃんとした契約をしよう。……今度はお試しじゃないやつを」
「……もう! アキ様は意地悪です!」
「ごめんごめん」
恥ずかしくて、つい一言付け足してしまったけれど、ちゃんと伝わったみたいだ。
その証拠に、怒ったみたいに喋りながらもシルフの顔は笑っていた。
「……それでは、アキ様。少し、失礼します」
「うん」
そう言って、胸に抱いたままだった僕の右手に、シルフはゆっくりと口を近づけて……。
軽く触れる程度のキスをした。
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名前:アキ
性別:女
称号:ユニーク<風の加護> ←NEW!!
武器:なし
防具:ホワイトリボン
冒険者の服
冒険者のパンツ
冒険者の靴
スキル:<採取Lv.1><調薬Lv.1>
精霊:シルフ ←NEW!!
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