第494話 ◆アリシアの大冒険(その5)
◆アリシアの大冒険(その5) 伝説の勇者さま
2日目の朝、最初の寄港地である島が見えてきた。
この島があるのは知っていたけど、そんなに大きな島ではないので上陸するのは初めてだ。
なんでもこの島は、昔大きな戦いがあったところで港町の中心に、伝説の勇者の像が建っているそうだ。
伝説の勇者なんて、なんかカッコイイじゃない。
やることもないので上陸早々、あたしは、その像を見に行くことにした。
港町はどこも同じで活気があって、あたしはこの独特の雰囲気が大好きだ。
朝早くから市場には沢山の魚が並び、すぐ隣には野菜や果物、雑貨などいろいろなお店も出ている。
船での雑用のお駄賃にとモッフルダフが幾らかくれたので、お菓子を買った。
それを持って像がある町の中心部へ向かう。
町の中心部へは港から真っすぐに伸びる広い道をひたすら東へ向かって歩いていけばいい。
この町もあたしの国と同じで、道が碁盤の目のように規則正しく整理され、道に迷う心配は無い。
通りの両側の建物も石造りで、綺麗に並んで建っている。
大陸に近いのに、この島が古くから栄えていたのは、魔物が居なかったことが大きな理由の一つらしい。
魔物に食い荒らされることがなかったため動植物が豊富だったし、畑を作ったり家畜を飼うのも容易だったのだと思う。
そういう意味では、セレネ王国の開拓は大変だった。
そんなことを考えながら、30分ほど歩くと正面に大きな噴水が見えてきた。
近くまで行くと大きな楕円形の池の真ん中にその像は立っていた。
いつ頃に活躍した人なのか分からないけど、なかなかのイケメンだ。
少しは誇張して作られているにしても、いかにも勇者さまって感じにみえる。
それでも、いつまでも眺めているほどではないし、辺りに何かないかとキョロキョロしていると。
お嬢ちゃん、この人誰だか知ってるかい? と太ったおじさんがニコニコしながら話しかけて来た。
えーと 伝説の勇者さまって聞いたけど。
なんだ知ってるのか。 でも実はこの勇者さまの玄孫(やしゃご)が、この島に住んでいるのは知らないだろー。
おじさんは、なんだか得意げに言ってくる。
えっ 勇者さまの玄孫って?
玄孫(やしゃご)っていうのは、勇者さまから数えて4代離れた子孫ってことさ。
4代・・・
あたしは、そう聞いて勝手に超カッコイイ男性を想像してしまう。
そうそう。 島の東の一番奥に小さ村があるんだけどそこに住んでるそうなんだ。
知り合いが見たって言ってたんだけど、その像の顔にそっくりだったらしいよ。
へぇー (ムフッ やった♪ イケメンじゃん いいこと聞いちゃった)
その後もおじさんがいろいろ説明してくれた。
例えば島には魔物がいないのになぜここに勇者さまの像が建っているのかと言えば、大陸で多くの魔物退治をしてきて、仲間とともに最後にこの地に定住したからだそうだ。
あたしたちは、結構早くに開拓者になったけど、あたしは戦いに明け暮れる日々は嫌な方だから、セレネの決断には感謝している。
***
さて、勇者さまの玄孫に会うためには、東の奥にある村まで行かないといけない。
でも島といっても歩いて島の東端まで行くには、どうやっても1か月はかかってしまう。
なので、あたしはいった船に戻ることにした。
船に戻ったあたしは、さっそく今後の船の進路をモッフルダフに確認した。
すると島伝いに東へ進むというので、この島の東に港があるかを聞いてみた。
大きな港は無いけど漁村があるというので、あたしはその漁村で下ろしてもらうことにした。
もちろん伝説の勇者さまの玄孫(やしゃご)の話は、内緒にしておいたのは言うまでもない。
モッフルダフには、やっぱりお城に帰るけど、せっかくだから島を少し観光してから帰るということにした。
アリエルちゃんが、あっという間に成長して結婚したのを見て、あたしも結婚したい気持ちが強くなっていた。
エルフは比較的早婚なのだ。 それに天界だけじゃなくて元々数の少ないエルフも、種族としては少子化が進んでいる。
だからあたしも早く結婚してママを安心させてあげたい。
ああ、早くイケメンの子孫くんに会ってみたいな♪
***
ねえ、「像が建っている」と「立っている」ってどう違うの?
セレネさん、小学校は卒業してるんですよね?
(#^ω^)
あーー 今のは失言でした。 高校は中退でしたよね。
(#^ω^)
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